退職と解雇はどう違う?
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<ポイント>
◆自己都合退職と会社都合退職では失業手当支給条件に差がある
◆解雇は後日の紛争となる可能性があるので慎重に
◆合意ができれば合意解約という方法もある

退職と解雇はどう違うのでしょうか。 従業員の勤務態度が悪いなどの理由で、会社が解雇の可能性も検討しながら退職の話し合いをするときに問題になることがあります。

退職も解雇も、従業員が会社を辞めるという結果が生じますが、退職は従業員の意思により辞めるもの、解雇は会社側の意思により辞めさせるものです。 さらに、退職にも自己都合退職と会社都合退職があり、自己都合退職は従業員が自発的に個人の事情等により退職するものであるのに対し、会社都合退職とは、会社が、人員整理を行ったり、特定の従業員に対し退職してもらいたいと判断したりすることにより、従業員に対し退職を働きかけ、従業員が会社の働きかけに応じて退職するものです。

自己都合の場合と会社都合の場合とでは、失業手当の支給期間や支給額が異なります。 具体的には、会社都合退職の場合すぐに失業手当が受給できるのに対し、自己都合退職の場合3か月間は受給できません。 受給期間も、会社都合退職の場合最大330日ですが、自己都合退職の場合最大150日です。 ただ、形式的には自己都合退職であっても、会社の倒産が確実になった場合や勤務時間の延長が著しい時、正規の賃金が支払われない場合や給与の遅配があった場合、結婚妊娠出産育児のために退職した場合などについては、失業手当の関係では会社都合退職と同じように扱われることになります。 このほか、会社によっては、退職金の支給額が自己都合退職と会社都合退職で異なる会社もあります。これは退職金規程の記載によって定められています。

では解雇はどのようなものでしょうか。 法律的には、解雇は会社側の一方的な意思表示として行うもので、効力発生のためには、従業員はその意思表示を受領する必要がありますが、従業員の同意までは必要ありません。 それであれば解雇のほうが退職させるよりも簡単なようにみえます。 しかし、解雇の場合、裁判所により当該解雇を行ったことが権利の濫用であると認定されたときには、解雇が無効となり、その判断が出るまでの給与を支払う必要が発生することがあるなど、後日大きな紛争となる場合があります。そのため、解雇権を行使するのはくれぐれも慎重に行う必要があります。 勤務態度に問題があるからといっていきなり解雇というのは通常認められず、会社として指導・改善命令をくりかえし、場合によっては懲戒処分を行ったりしても改善がなされないなど、このままでは雇い続けることができないというのが客観的にも明らかなときにのみ解雇が有効と認められるのです。 解雇にはさらに懲戒解雇という懲戒処分の1種としての解雇もあります。この場合は退職金を支払わなくてもよいとされることが多いなど、従業員にとっては非常に厳しい処分です。 このような厳しい処分であることから、裁判上、懲戒解雇は普通の解雇の場合よりもさらに厳格に審査されます。懲戒解雇が認められるのは業務上の背任・横領の場合を除けば非常に限られた事案になります。

失業手当の関係では、通常解雇の場合は会社都合退職と同様に扱われますが、懲戒解雇の場合は自己都合退職と同様に扱われます。 なお、解雇の場合には、30日の予告期間が必要であり、その期間を取ることができなかった場合には代わりに30日分の平均賃金の支払いが必要となります。懲戒解雇の場合には労働基準監督署の除外認定を受ければ予告手当の支払いは必要となりません。

以上のことをまとめると、会社側がやめてほしいと口火を切って退職に至った場合には、論理的に自己都合退職ということにはなりません。会社都合の退職になります。 会社都合退職の場合には、解雇のときに支払われる予告手当相当分の金銭や、それに更に解決金的な支払額をプラスして、退職一時金を支払う場合もあります。 この合意が成立したときには、後日の紛争を避けるため、お互いの意思を明示して、労働契約の合意解約という形にして、退職勧奨に基づく会社都合退職とするという合意書をつくる場合もあります。 解雇は退職に関する従業員の同意がどうしても得られなかった場合に検討すべき方法ですが、安易にこの方法の選択はしてはなりません。これまでに十分な手続きを踏んでいるか、解雇が有効となるための理由は備えているかなどについて弁護士に相談してから行ってください。 また、従業員が退職に合意しているのになぜか解雇されることを強く希望した場合には、失業手当の受給条件のことを気にしていることもありますので、会社都合退職として受給できることをきちんと説明して会社都合の退職手続きをとるようにしてください。従業員が希望したからといって安易に解雇にすることは後日紛争となる危険性がありますので慎重に対応してください。