【創設の趣旨】
放置された空き家による、周辺の生活環境への悪影響を未然に防ぐため、空き家発生の最大の要因である「相続」に由来する古い空き家(除却後の敷地を含みます)の有効活用を促進することにより、空き家の発生を抑制することを目的としています。
また、「使える空き家は利用し、使えない空き家は除却する」観点から、旧耐震基準の下で建築された家屋を相続した相続人による耐震リフォームまたは除却を促すインセンティブとすることも目的とされています。
【制度の概要】
相続開始直前において、被相続人のみが居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、その家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含みます)または除却後の土地を一定期間内に譲渡した場合には、その家屋または除却後の土地の譲渡益から3千万円を控除することができます(図1参照)。
【適用要件】
1 譲渡の範囲
次の(1)または(2)に掲げる譲渡に該当するものが対象となります。
(1) 相続の開始直前において、被相続人の居住の用に供されていた家屋(次の要件(イ)および(ロ)を満たすものに限る)の譲渡またはその被相続人の居住用家屋とともにするその敷地の用に供されていた土地等の譲渡
(イ)その相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
(ロ)その譲渡の時において、地震に対する安全性に係る規定またはこれに準ずる基準に適合するものであること
(2) その被相続人居住用家屋(次の要件(イ)を満たすものに限る)の除却をした後における、その敷地の用に供されていた土地等(次の要件(ロ)に掲げる要件を満たすものに限る)の譲渡
(イ)その相続の時からその除却の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
(ロ)その相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
2 被相続人の居住用家屋の範囲
次の全ての要件に該当するものが、対象となります。
(1) 被相続人の居住用家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
(2) 区分所有建築物でないこと
(3) その相続の開始直前において、その被相続人以外に居住していた者がいない家屋であること
3 譲渡期間
平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡したものであること(相続の時から、その相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限られます)。
4 譲渡対価限度額
譲渡の対価の額が1億円を超えないこと。
5 申告手続
この特例は、確定申告書に、その被相続人居住用家屋およびその被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等が前記の要件を満たすことを地方公共団体の長等が確認した旨を証する書類その他の書類の添付がある場合に適用されます。
6 他の規定との関係
「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」との選択適用とするほか、「居住用財産の買換え等の特例」との重複適用、その他所要の措置が講じられています。
【適用に当たっての留意事項】
1 対象となるのは、被相続人の居住用家屋およびその敷地の用に供されていた土地等で相続または遺贈による取得に限られます。
2 「相続財産に係る譲渡所得に課税の特例」の譲渡適用期限は、相続税の申告書の提出期限の翌日から3年を経過する日までの譲渡ですが、この特例は、相続開始となった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡したものであり、その期限に相違があります。