分譲マンションの建替えを行うには
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<ポイント>
◆区分所有者の頭数・議決権の各5分の4以上の賛成が必要
◆反対者の権利を買い取って建替えを進めることができる

老朽化したマンションが年々増加し、現在、築30年以上のマンションの数が100万戸を超えているといわれており、建替えの必要性が高まっていると思われます。今回は、分譲マンションの建替えを決定する方法について述べます。
分譲マンションの建替えを決定する方法としては、区分所有法に基づく建替え決議(多数決)の方法と、民法の原則に基づく全員の合意の方法があります。

区分所有法に基づく建替え決議の方法をとるにあたっては、建替え決議を行うことを目的とする集会の日の2か月以上前に集会の招集通知を発し、集会の日の1か月以上前に説明会を開く必要があります。そして、集会で、区分所有者の頭数の5分の4以上が賛成し、かつ、議決権の5分の4以上が賛成した場合に、建替え決議が成立して建替えが可能となります。
なお、敷地の一部を売却して残りの敷地に建物を建て替えたり、敷地に隣接した土地を購入して敷地を拡げてその上に建物を建て替えたりすることはできますが、現在の敷地と全く別の土地に建物を再築することはできません。

建替え決議がなされたとしても、反対する区分所有者に配慮して、以下の手続を踏む必要があります。
集会を招集した者は、欠席者や、建替えに反対する区分所有者に、建替えに参加するか否かをあらためて回答するよう、遅滞なく書面で催告しなければなりません。この催告から2か月以内に回答しなかった区分所有者は、「建替えに参加しない」と回答をしたものとみなされますので、建替え参加者と不参加者が確定します。
そして、建替え参加者は、不参加者に、区分所有権・敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できます。建替え参加者の資力だけでは不参加者の権利を買い取ることが難しくても、不参加者の権利を買い受けることができると指定された者(通常はデベロッパー)が建替え不参加者に対し、権利を時価で売り渡すよう請求できます。建替え不参加者の権利を買い取ることができる者の指定は、建替え参加者全員の合意により行う必要があります。
こうして、建替え不参加者には建替え手続から外れてもらい、建替え参加者だけで建替えを実施できるようになります。

次に、建替えについて民法の原則に基づく全員の合意がなされた場合について述べます。
この場合、建替えの合意がなされた後、デベロッパーとの等価交換方式による共同事業として建替えを進めることが多いです。区分所有法による建替えの方法が平成14年に改正されるまでは、区分所有法に基づく建替え決議を経ても建替えが認められるための要件が厳しく、無効となるおそれがあったので、実際には建替えについて全員で合意し、デベロッパーとの等価交換方式による共同事業として建替えを進めることがほとんどでした。ここでいう等価交換方式とは、建替え前のマンションの区分所有者が土地を提供し、デベロッパーがマンションの建設資金を提供してマンションを建設し、それぞれの出資割合に応じて土地建物の持分を取得するというものです。建替え前のマンションの区分所有者とデベロッパーとの間で、出資額に応じて土地の持分と新築マンションの持分を等価で交換することになります。
なお、敷地を売却して別の土地を購入し、その土地上にマンションを建てることも(これを建替えというのかはともかく)可能です。

建替えの決定がいずれの方法によりなされたとしても、マンションの1室に賃借人がいる場合、当然に賃貸借を終了させることにはなりません。契約期間の更新を拒絶するための正当事由があることの一資料にはなりますが、必ず契約が終了するとはいえません。賃貸人は、建替えの計画が持ち上がった段階で、例えば、契約期間が終了したら必ず退去してもらえる定期借家契約に切り替えてもらうよう、事情を説明して賃借人を説得する必要があるものと思われます。

なお、建替え決議がなされた後、マンション建替え円滑化法という法律に従えば、借家権を建替え後のマンションに移しつつ円滑に建替え事業を進めることができます。このマンション建替え円滑化法については、またの機会に述べたいと思います。