マンション管理費の滞納への対応
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<ポイント>
◆管理費滞納はマンション住民間で不公平を生む
◆民事訴訟、少額訴訟、支払督促などの法的手続も
◆先取特権(さきどりとっけん)に基づく競売も可

マンション管理費滞納のご相談を受けることがあります。管理費が区分所有者(各部屋の所有者)から毎月適正に支払われることは、マンションを維持管理していく上で不可欠です。管理費滞納の問題は、住民間にも不公平感、軋轢を生むおそれがありますので、その解決はマンション住民が良好な関係を維持するためにも極めて重要です。

ところが、国土交通省が2009年4月10日に発表した2008年度マンション総合調査では、管理費や修繕積立金を滞納している住戸があるマンションの割合が、38.5%もあるという結果が出ています。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/manseidata.htm
この調査結果をみると、多くの管理組合が、管理費の滞納の対応に苦慮していることがうかがえます。

管理組合がマンション管理業者に管理を委託する際、国土交通省作成の契約書ひな型「マンション標準管理委託契約書」が広く用いられており、もちろん管理費の督促も委託内容として含まれています。
ただ、この契約書では、管理業者が管理費の滞納者に対して督促してもなお支払われないときは、管理業者は責任を免れると定められています。したがって、その後の請求は、管理組合が行わなくてはなりません。

このとき管理組合としては滞納者に対して、裁判所を通じた法的手段にでることも十分考えられます。
通常の民事訴訟と同様、マンション所在地を管轄する地方裁判所(滞納額=訴額が140万円以上のとき)または簡易裁判所(同じく140万円未満のとき)に訴訟を起こすことができます。

他方、訴額が60万円以下であれば、簡易裁判所にて「少額訴訟」を起こすこともできます。1日で審理を終結し、即日で判決を出すという手続です。
通常であれば、その日に済んでしまいますし、場合により裁判官を交えて協議し、分割払いを認めて和解するチャンスがあるという利点があります。
ただ、このことは通常の民事訴訟とそれほど変わりません。通常の民事訴訟は時間がかかると言われますが、滞納額について争いがなければ、あとは滞納者がいつ、どれだけ払えるのかだけが問題であるにすぎず、もし任意の支払い提案がなければ、速やかに判決を下されるという点では少額訴訟と変わりません。もちろん裁判所で和解することもできます。和解の結果は「和解調書」としてまとめられ、判決書と同様、それに基づいて滞納者の財産を差押できるようになります。

同じく簡易裁判所での手続として「支払督促」を申し立てることもできます。請求額に制限はなく、証拠がなくても裁判所の決定で支払命令が出されます。
ただ、相手方には通常訴訟に移行させるための異議が認められています。その理由は問われませんので、滞納者側が単に引き延ばしのために異議を述べることも大いにあります。その結果、結局、1から通常訴訟が始まりますので、それなら最初から通常訴訟を起こした方がよかったということが多いです。
「少額訴訟」や「支払督促」については定型書式が最高裁判所のホームページからダウンロードできますが、弁護士に依頼する方がスムーズなことも多いでしょう。

また、さらに「建物の区分所有等に関する法律」は、区分所有者、ひいては区分所有者によって構成される管理組合には、「先取特権」(さきどりとっけん)が認められています。滞納者の区分所有権やその区分所有建物に備え付けられた動産などを裁判所において競売にかけ、その売却金から、他の債権者に優先して管理費の支払いを受けることができます。競売手続の専門知識が必要ですので、弁護士に相談される方がよいでしょう。

なおマンション管理費は5年で時効にかかりますので、この点も注意が必要です。