<ポイント>
◆最高裁で初の判断が示される見込み
◆養子縁組をすると1人につき基礎控除額が600万円増える
◆孫と縁組すると相続税課税を1回に省略できる
◆生命保険金・死亡退職金のうちの相続税非課税額が養子1人につき500万円増える
2016年12月19日、最高裁は、預金は相続開始(被相続人の死亡)と同時に法定相続割合に応じて当然に分割されるとの従前の判例を変更し、預金も遺産分割の対象となると判示しました今後、預金は遺産分割協議などを経なければ払い戻しができないことになりますので、実務に大きな影響を及ぼすことになりそうです。
そして2017年1月31日にも最高裁で、相続がらみで重要な判決が下される見込みです。新聞記事にもなっていましたが、ある男性が長男の子(つまり孫)と養子縁組をして翌年に亡くなったところ、男性の長女などが、男性には真に親子関係をつくる意思はなかったとしてその養子縁組が無効であることの確認を求めて東京家庭裁判所に提訴したというものです。
第一審判決は男性に養子縁組の意思があったとして長女側の請求を棄却しましたが、第二審東京高裁判決は、男性が税理士から養子縁組による節税の説明を受けていたことなどに着目し、真の親子関係をつくる意思はなかったとして第一審判決とは逆に縁組を無効と判断し、長女側の請求を認めました。
養子縁組による「節税」とはどういうことか念のため説明します。相続税は、相続財産合計額から以下のアまたはイの金額(基礎控除額)を差し引いた残りの金額をもとに計算するのですが、亡くなった被相続人に実子がいれば養子1人まで、実子がいなければ養子2人まで、法定相続人の数にカウントできます。つまり養子が1人増えると相続財産合計額から差し引く金額が1000万円または600万円増えますので、それだけ相続税が発生しにくくなる、または発生しても税額が低くなるのです。1人または2人と制限されているのは、養子を増やすことによって相続税を安くしようという節税対策への歯止めのためです。
ア H26.12.31までに発生した相続 5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
イ H27.1.1以降に発生した相続 3000万円+(600万円×法定相続人の数)
前述した事件では、「相続税対策」の養子縁組の有効性が主な争点となっていますが、第二審判決を変更するためには開かなければならないとされている弁論が2016年12月20日に最高裁で開かれましたので、無効と判断した第二審判決が変更される可能性があります。
最高裁でどのような判断が示されるのか、2017年1月31日に明らかとなります。
なお、養子縁組による「節税」としてはほかにも、①孫と縁組すると、親から子、子から孫と2回にわたって相続税が課されずに1回で済ませられる(ただしその孫につき相続税額が2割加算される)、②生命保険金・死亡退職金のうちの相続税非課税額が養子1人につき500万円増える、などがあります。