相続税については、バブル期に地価が急騰し、相続税負担が過重になったことから、その負担軽減を目的に相続税の基礎控除を引上げ、税率構造の緩和等をしてきました。
しかし、その後の地価下落にもかかわらず、相続税の基礎控除の引下げが行われなかったため課税対象者割合がかつてないほど下がったことを受けて、平成25年度税制改正では、「資産再配分機能の回復」を図ることを目的に、相続税法の改正が行われました。
以下、Q&A方式で主要な改正ポイントを整理してみます。
【基礎控除】
Q
相続税の基礎控除は、どのようになりましたか。
A
物価や地価が現在と同等であった頃に適用されていた水準と同等となるように再設定し、従来の水準の60%に改定することとされました(図表1)。
この改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
【相続税の税率】
Q
相続税の税率構造は、どのように見直されましたか。
A
最高税率が55%に引き上げられるとともに、税率の区分が従来の6段階から8段階になりました(図表2)。
この改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
【小規模宅地等の特例】
Q
相続税の基礎控除が引き下げられた反面、負担軽減策として小規模宅地等の特例の適用範囲が見直されたようですが、その内容を教えてください。
A
1、適用対象面積の拡充
特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積の上限を拡充し、かつ、特例の対象として選択する宅地等のすべてが、特定事業用宅地等および特定居住用宅地等である場合は、それぞれの適用対象面積まで適用可能となります(図表3)。
なお、貸付事業用宅地等を選択する場合の適用対象面積の計算は、従来どおりです。
この改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
2、二世帯住宅の取扱い
一棟の建物で構造上区分のあるものについて、被相続人およびその親族が各独立部分に居住していた場合、その親族が相続または遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人およびその親族が居住していた部分に対応する部分は、特例の対象となります(図表4)。
この改正は、平成26年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
3、老人ホームの場合
老人ホームに入所したことにより、被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等が、次の要件が満たされる場合に限り、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして、特例が適用できるようになります。
(1) 被相続人に介護が必要なため入所したものであること
(2) その家屋が貸付け等の用途に供されていないこと
この改正は、平成26年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について、適用されます。
【相続時精算課税】
Q
相続時精算課税の適用要件と対象者について、どのように改正されましたか。
A
若年世代への資産の早期移転を一層促進する観点から、相続時精算課税の適用要件について、贈与者および受贈者の対象を拡充しています(図表6)。
この改正は、平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について、適用されます。