上場会社の定時株主総会の集中日まであと約3ヶ月となりました。
2010年6月の定時株主総会では、招集通知の記載事項が定められている会社法施行規則の改正に加えて、有価証券報告書等やコーポレート・ガバナンス報告書の記載事項の変更にも留意しなければなりません。
有価証券報告書等やコーポレート・ガバナンス報告書の記載事項について株主から質問される可能性があるからです。
有価証券報告書等の記載事項は「企業内容等の開示に関する内閣府令」(開示府令)、コーポレート・ガバナンス報告書の記載事項は有価証券上場規程により定められています。
以下には、上場会社の大部分をしめる監査役設置会社が、会社法施行規則、開示府令、有価証券上場規程の改正に関し、留意すべき事項を述べます。
招集通知に添付される事業報告書や参考書類の記載事項の主な変更点は以下のとおりです。ただし、今回の会社法施行規則改正は従来の実務慣行を明文化しただけのものが多く、これらは多くの会社ですでに実行されています。
(1)会社の支配者の在り方に関する基本方針の記載の際に「基本方針の内容」、「取り組みの具体的な内容」については「概要」を記載すればよいことになりました。
(2)会社提案議案について提案の理由を記載しなければならなくなりました。
(3)持ち株数で上位10名の株主の氏名、所有株式数、持株比率を記載しなければならないことになりました。
従来と異なるのは、「重要な兼職」にあたらなければ役員について他の法人等の代表状況を記載しなくてよくなったことです。ただし、取締役・監査役選任議案では候補者の略歴を記載しなければならないことは従来と同じですので略歴記載箇所には会社等の代表者等である旨の記載がされます。
「重要な兼職」があればそれを記載しなければならないことは従来と同じです。この「重要な兼職」というのはその会社(自社)にとって重要ということですから、取引関係がない場合、あっても小規模にとどまる場合などにはあてはまりません。
「重要な兼職」がある場合には兼職先と自社との関係を開示することが必要になります。
2009年6月の金融庁や経済産業省の研究会による報告をうけて、金融庁は開示府令の改正を進めています。すでに2009年12月11日に改正されたものと2010年3月31日改正予定のものがあります。
すでに改正されたものとしては、有価証券報告書を定時株主総会前に提出することができるようになりました。定時株主総会前に有価証券報告書を提出する会社は少ないものと思われますが、総会前に提出しなければ株主からその理由を質問される可能性があります。
有価証券報告書等の以下の変更は現時点では改正案の段階ですが、ほぼ同内容の改正がされるものと思われます。なお、役員報酬の開示については反対意見もありましたが、3月18日付日経新聞によれば金融庁は同改正を行う方針を決めたとのことです。
(1)コーポレート・ガバナンス体制について記載事項が増えました。特に社外取締役を選任していない場合にはその理由や社外取締役に代わる社内体制等に関する考え方などを記載しなければならないことは重要です。なお、財務、会計に関する相当程度の知見を有する監査役が含まれるかどうかを記載しなければならないことになりましたが、従来から事業報告書やコーポレートガバナンス報告書に同趣旨の記載をしている企業が多くみられたところです。
(2)1億円以上の役員報酬を受けている者の氏名と額等を記載しなければなりません。
(3)投資目的以外の理由で保有する株式等について貸借対照表計上額の上位30銘柄等を記載しなければなりません。これは持合株式の状況の開示を求めるものです。
(4)議案ごとの得票数等を記載した臨時報告書を提出しなければなりません。
証券取引所も上記研究会の報告をうけて有価証券上場規程の改正に取り組んでいます。
これにより独立役員の確保と開示が必要になりました。(詳細は当職執筆の法律情報「独立役員確保の義務化について」をご参照ください。)
また、社外取締役や財務、会計に関する相当程度の知見を有する監査役に関する記載など上記有価証券報告書の記載内容と共通する内容をコーポレート・ガバナンス報告書に記載して証券取引所に届け出なければなりません。