閉鎖会社の株主総会招集通知について
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<ポイント>
◆取締役会設置会社は書面等による招集通知を、非設置会社は口頭等による通知も可能
◆取締役会設置会社の定時総会の招集通知には事業報告・計算書類・監査報告書の添付を
◆招集通知の議題と総会議事録の内容が一致するように

 

多くの上場会社の決算期である3月末が近づいており、6月にはその定時株主総会の時期となります。上場会社の株主総会の招集通知については、拙稿「株主総会資料の電子提供制度」、「株主総会資料電子提供制度の施行」、「株主総会資料電子提供の開始にあたって」で解説してきました。
本稿では、閉鎖会社の株主総会招集通知について述べたいと思います。

会社法では、株式会社は多様な機関設計が可能ですが、株主総会の招集通知に関しては取締役会設置会社かどうかで大きく異なります。なお、機関設計のいかんに関わらず、株主全員の同意があるときは招集手続きを省略できますが、その同意は株主総会毎に得る必要があります。
最初に取締役会設置会社の招集通知について述べます。なお、株主数が1000人以上である場合には書面等による議決権行使の定めをする必要がありますが、本稿では、株主数の少ない会社を念頭におくので、この定めがない場合とします。
招集通知は、株主総会の日の1週間前までに書面(招集通知書)による通知を発送しなければなりません。株主の承諾を得て電磁的方法による通知を発することもできます(以下、書面と電磁的方法を併せて「招集通知書等」といいます)。
招集通知書等には、株主総会の日時・場所、株主総会の目的事項(議題)を記載する必要があります。取締役会設置会社では、原則として招集通知等に記載された議題以外は決議することはできません。
さらに、定時株主総会の招集の場合には、事業報告、計算書類を添付する必要があります。また、取締役会設置会社は、原則として監査役を置くこととなっていますので、監査役の監査報告書も添付する必要があります。
定時株主総会では、計算書類の承認が必要となります。役員改選期においては取締役・監査役の選任の議題も招集通知等に記載されていなければなりません。
しかし、定時株主総会の招集通知等に取締役の選任の議題は記載されているものの監査役の選任の議題は記載されていない、剰余金の処分の議題は記載されているものの計算書類の承認の議題は記載されていない、そしてそれにも関わらず、株主総会議事録には招集通知等に記載されていない議題も議決されたとの記載があるという事例もあります。このようなミスのないように点検が必要です。

次に取締役会非設置会社について述べます。
招集通知は株主総会の1週間前までに発する必要がありますが、定款でこれを短縮することも可能です。条文上は1日前とすることも可能ですが、開催日時に間に合うように招集通知が到着する必要はあると思います。
通知は書面で行う必要はなく、口頭やファックスで行うことも可能です。
招集通知の内容としては、株主総会の日時・場所は必要です。
取締役会非設置会社では、株主総会の議題に制限はないので、招集通知において議題を特定する必要はありません。
取締役会非設置会社では、株式譲渡の承認は株主総会の決議事項ですが、譲渡人である株主は株主総会の決議に参加できます(ただし、特別利害関係人となり、著しく不当な決議の場合には取消請求の対象となります)。この点は、取締役会設置会社において、譲渡人・譲受人が取締役である場合、取締役会による承認決議に参加できないのと異なります。

最後に、取締役会設置会社において、招集通知をメールで行うのが簡便であって利用したいと考えている会社もあると思います。
そのためには、あらかじめ、当該通知の相手方に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければなりません(会社法施行令2条1項)。
したがって、招集通知送付前にメールで招集通知を送ることについて書面またはメールで承諾を得ておく必要があるということになります。
この承諾は株主総会毎に行わなければならないかについては、上記の招集手続きが省略できる場合とは異なり、その必要はないと思います。上記会社法施行令2条2項で、上記承諾を得た後に当該承諾者が電磁的方法による通知を受けない旨の申し出をしたときは、同方法による通知をしてはならないと規定されていることからも、反対の申し出をするまでは有効としているものと解されると思います(以上は私見です)。