重大製品事故の経産省への報告義務
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消費生活用製品安全法が改正され、消費生活用製品について重大製品事故が起こった場合、メーカーや輸入業者がそれを知った日から10日以内に経済産業省へ報告することが義務付けられたことは当メールマガジンやホームページですでにお知らせしております。
本年5月14日の法律施行以来、経産省のウェブサイトには連日のようにといっていいほど、事故事例がアップされ、公表されています。
そこで、報告義務の概要を再確認し、経産省による公表の運用の実際についてご説明します。

まず対象となるのは「消費生活用製品」、つまり「一般消費者の生活に使用される製品」のことです。
逆に言うと、業務用に使用される製品以外のすべての製品を指します。たまたま業務用に使用されるにしても、それが一般消費者の生活に使用されるものであれば、やはり消費生活用製品です。たとえば、パソコンを会社のオフィスで使用する場合、石油ストーブを作業場で使用する場合も、やはり消費生活用製品であることに変わりはありません。逆に、メーカーが業務用として製造している製品でも、一般消費者がたとえばホームセンターやカタログ、ネットショップで購入して、家庭で使えるようなものも消費生活用製品です。
なお、薬事法や道路運送車両法など他の法律で規制されている製品については本法の対象外です。たとえば医薬品については「副作用等の報告」という報告義務付け制度が薬事法によって規定されています。

そして報告が義務付けられるのは「製品事故」のうち「重大製品事故」に当たるものです。
製品の事故が起こったといっても、その原因が消費者の誤った使用によるものであるかもしれませんし、また原因が分からない場合もあるでしょう。
「製品事故」について、法律は、「一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故」または「製品が滅失もしくはき損した事故で、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもの」のいずれか、と定義しています。
ただし、製品の欠陥によって生じた事故でないことが誰の目から見ても明々白々な事故は製品事故ではありません。包丁を使って人を傷付けたとか、自転車を使用中に自動車に衝突されたなどの場合です。
問題は、一般消費者が本来の目的外で使用していたり、その使用方法に重大な過失があった場合です。たとえば、家庭用シュレッダーに子供が指を突っ込んで怪我したという場合、確かに目的外の使用によるものですが、子供が指を突っ込もうとしても指が入らないような構造になっていなければ、欠陥による事故として製品事故になるおそれがあります。
目的外使用や重過失による使用が疑われても、判断が難しい場合は、経産省に報告しておくべき、というのが実際的な判断だと考えます。
また原因が不明な場合は、製品の欠陥によることが明々白々とはいえませんので、報告義務の対象になります。
では、製品事故に該当したとして、経産省に報告すべき「重大製品事故」とは何かというのが次の問題です。
死亡事故がそうです。重病または重傷事故もそうです。治療に要する期間が30日以上のけが、病気をもって重傷、重病としています。「治療に要する期間が30日以上」という判断はいつの時点でどうやってするのかということは、これは事故発生直後の医師の診断によるということになります。最初は軽症だったところが、その後に死亡したという場合は、死亡した時点から重大製品事故が起こったとして、報告期間の10日が、その死亡を知った日から始まります。また、後遺障害が残る事故も含まれますし、一酸化炭素中毒の事故も含まれます。現実に生命・身体に被害が及んでいなくても、たとえば製品が出火し、消防が火災と確認したものは、消費者の生命、身体に被害が及ぶおそれがあったとして重大製品事故になります。

経産省への報告は、重大製品事故の発生を知った日から10日以内です。報告すべき項目は事故発生日、被害の概要、事故の内容、製品の名称、機種・型式、製造輸入販売数及びその時期、事故を認識した契機と日、事故原因、事故への対応などです。
ここでいう知った日というのは、第一報を会社のいずれかの部署のだれか、たとえば、お客様窓口や営業担当部署のだれかが知った日をいい、会社のトップや責任者が知った日ではないということは若干注意する必要があります。
この報告については経産省のウェブサイトに報告用のフォームがあります。これを用いて、経産省の所定の部署に、郵送、ファックス、電子メール、ウェブサイトのいずれの方法によってもよいことになっています。このことは報告の期限となる10日目が休日であっても、そのことによっては免責されないということをも意味します。

経産省はこうした報告を受けてウェブサイト等でその事故事例について公表して一般消費者にも注意を喚起します。
その製品がガス・石油機器であれば、製品の機種・型式、事故の内容等を企業名と共に「直ちに」記者会見やウェブサイトにて公表します。被害の拡大を防ぐ必要性が特に大きいからだと考えられます。
ガス・石油機器以外については、経産省は重大製品事故が製品に起因して生じたものかについて改めて審査します。
製品事故に起因して生じたと疑われる事故については、「製品起因が疑われる事故」として企業名、機種・型式名、事故の内容等を公表します。製品事故によって生じた事故でないことが明白であれば公表の対象となりません。
報告受理日から1週間以内にその結論が出なければ、「製品起因か否か特定できない事故」として、まず事故の概要のみ公表されます。つまり、企業名は公表されません。その後更なる事故調査、原因分析がなされます。その結果、製品に起因して生じた事故となれば、やはり事業者名も含めて公表されます。経産省において判断がつかなければ第三者委員会の審議を経て公表されるということになります。逆に、第三者委員会においても、製品に起因するか否か不明であるとの判断になれば、「製品に起因して生じた事故かどうか不明であると判断した案件」とし公表されます。

このような報告義務に違反した場合には、経済産業大臣から、重大製品事故に関する情報収集、その管理・提供に必要な体制整備を命じるよう命令を受けることがあります。さらに、このような「体制整備命令」に違反した場合、個人、法人の代表者に1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。法人にも100万円の罰金が科されますので、注意が必要です。

報告義務を十分に果たすには、普段から、事故事例についての情報窓口を整備し、それが社内で迅速に伝達され、10日でできる限りの情報収集、事故原因の究明ができる体制を整えておく必要があります。