迷惑行為を繰り返すマンション居住者への対応について
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<ポイント>
◆迷惑な居住者への対応手順
◆実際の裁判例

1 はじめに
マンション(区分所有建物)は多くの人が共住しますが、高額な買い物であることから簡単には引っ越しをすることができないこともあり、ひとたび居住者間での諍いが生じると関係性を修復することが難しくなることがあります。その場合、度を越した言い合い・口論が継続することもあります。また、マンションの階段、廊下など共用部分への私物の放置など一部の迷惑な居住者により住環境が悪化することもあります。こうした迷惑行為によりマンション価値そのものが低下してしまう危険を負うことになります。

2 具体的な対応手順
(1)では、迷惑行為を繰り返す居住者に対してはどのような対策を採ることができるでしょうか。以下に段階的に採用される対応の一例を記載します。
ア 具体的に管理規約の何条に違反する行為であるかの確認。
イ 迷惑行為の証拠化(録音・録画)
ウ マンションの掲示板・エレベーター等での注意喚起(個人名を特定しない)
エ 管理会社からの個別メッセージの送付
オ 可能であれば理事会メンバーを踏まえての示談の調整
カ 総会決議、理事長の勧告及び指示など各種手続の履践
キ 弁護士名義での内容証明郵便による警告
ク 迷惑な居住者への訴訟提起(建物の区分所有等に関する法律57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)、58条(使用禁止の請求)、59条(区分所有権の競売の請求)、60条(占有者に対する引渡し請求))、その後の強制執行
(2)多くは、管理組合が管理会社と契約しているため管理会社が対応してくれ、それで解決することが多いと思います。しかしながら、居住者も、自身の主張に拘り過ぎれば最終的には法的手続により区分所有権の競売すら請求されてしまう可能性があることは留意しなければなりません。

3 裁判例
建物の区分所有等に関する法律57条ないし60条が問題となった事例で管理組合からの請求が認容された裁判例を以下に列挙します。
(1)57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)の認容事例
・平成18年3月30日東京地裁判決(判時1949号55頁)
・平成19年7月17日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・平成24年1月17日最三判(平成22年(受)2187号/差戻審平成24年3月28日東京高裁判決(判タ1366号90頁、判時2142号26頁)
・平成23年8月25日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・平成30年3月2日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
(2)58条(使用禁止の請求)の認容事例
・平成23年1月25日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
(3)59条(区分所有権の競売の請求)の認容事例
・平成17年9月13日東京地判(判時1937号112頁、判タ1213号163頁)
・平成20年8月29日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・平成24年2月9日福岡地裁判決(裁判所WEBサイト)
・平成24年9月18日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・平成26年3月27日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・平成29年10月31日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・前掲平成30年3月2日東京地裁判決(ウェストロー・ジャパン)
・平成31年1月22日札幌地裁判決(判時2424号92頁、判タ1468号180頁)
(4)60条(占有者に対する引渡し請求)の認容事例
・平成8年5月13日東京地判(判時1595号77頁、判タ953号287頁)
・平成7年11月21日東京地判(判時1571号88頁、判タ912号188頁)
・平成12年9月6日横浜地裁判決(判時1737号90頁、判タ1105号246頁)