誇大広告を争う法的手段
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ある会社が自社の商品やサービスの品質を実際よりもよく見せるような誇大広告を行った結果、それを信用した消費者などの顧客がその商品などに飛びつき、ライバル社が割を食って、売り上げが落ちた。このような場合、ライバル社はどのような手段が取れるか。逆にライバル社から法的手段を執られないようにするにはどうすればよいか。

一つは「不当景品類及び不当表示防止法」(景表法)違反という点です。
景表法は、商品・役務(サービス)の品質(4条1号)や価格(4条2号)などが実際のものまたは競争者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示を禁止しています。
公正取引委員会は違反事業者に対し排除命令を出すことができますし、都道府県知事は違反行為を中止するよう指示する権限を認めています。景表法は、一般消費者に対する不当表示は事業者に対するものよりも波及しやすいことなどを考慮して、独占禁止法上の手続きに比して簡易迅速な手続きを設けています。もっとも、これらは被害者側に法的な申立権を認めているものではありません。

一般消費者に対する不当表示については景表法が優先的に適用されますが、事業者を含む広く顧客一般への不当表示は独占禁止法によって禁止されています。公正取引委員会は独占禁止法上の「不公正な取引方法」の一つとして「ぎまん的顧客誘引」を指定しています。
「不公正な取引方法」によって利益を侵害され、または侵害されるおそれのある者には、一定の要件の下、違反行為の差止請求権が認められています。

もう一つは不正競争防止法によるものです。
不正競争防止法は、2条1項13号において、商品・役務の広告などに、商品等の品質や内容を誤認させるような表示をして売ることなどを「不正競争行為」として規定しています。
これによって、営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は、不正競争行為者を相手取って、差止請求をすることができます。不正競争行為者に故意または過失がある場合には損害賠償請求をすることもできます。
近時、「5年間完全ノーワックス」などとうたった自動車用コーティング剤の広告が不正競争防止法上の「誤認表示」に当たるとして差止請求、損害賠償請求などがなされた事件で、知的財産高裁は、一審判決を取り消して、原告のこれら請求を棄却する判決を言い渡しました。裁判所は、双方から証拠として提出された実験結果を検討し、「被告商品には新車時の塗装面の光沢度を5年間持続する効果がないとまで的確に認定することはできない」として、被告による表示内容が「誤認表示」にあたるとは認められない、としました。
同種の最近の裁判例では、ローソクの「油煙(すす)90%カット!」などとした広告が「誤認表示」に該当するとしたもの、ガムについて「(一般的なキシリトールガムに比べ)約5倍の再石灰化効果を実現」とした比較広告が「誤認表示」に当たらないとしたもの、などがあります。
いずれも、裁判所は、原告、被告双方の実験結果を詳細に検討しています。従来品に比べて高品質であるとの触れ込みで新商品を売ろうとする側にとっては、科学的な裏付けを十分にとっておくことが法的紛争を防ぐ意味でも重要になってきます。