裁量労働制の改正について
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<ポイント>
◆2024年4月1日から改正労働基準法施行規則が施行
◆専門業務型と企画業務型で改正内容が異なる
◆有用な制度ではあるものの適正な運用が必要

 

裁量労働制とは、あらかじめ労使協定にて決めた労働時間を働いたものとみなす制度のことをいいます。
裁量労働制のメリットは、企業にとっては人件費管理が簡易になることや社内満足度の向上が見込めること、求人の際にも好影響が期待できることなどです。従業員にとっては自由に働けることや労働時間を自分で管理できることなどです。
デメリットとしては、企業にとっては労務管理の手間がかかること、従業員にとっては残業代が出ないことなどです。

裁量度労働制については業種や職種に応じて省令や告示で対象業務が定められる「専門業務型」と事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務について認められる「企画業務型」にわけられます。

2024年4月1日から改正労働基準法施行規則の施行によって裁量労働制が変わりました。
1.専門業務型は「対象業務の追加」と「導入時は労働者本人の同意が必要になる」が変更点です。
具体的にはいわゆるM&Aアドバイザーが対象業務として追加されました。
また制度導入に関しては労使協定だけではなく労働者本人の同意が必要となり同意の撤回手続きも定められました。
001164346.pdf (mhlw.go.jp)(厚生労働省のパンフレット)

2.企画業務型については「運営規程事項の追加」「決議事項の追加」が変更点です。
運営規程事項の追加とは、労使委員会を設置するために必要な運営規程として以下の3点が追加されました。
(1)対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について使用者からの説明に関する事項
(2)制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
(3)開催頻度を6か月以内ごとに1回とすること
決議事項の追加は、導入にて決議しなければならない事項として、以下の2点が追加されました。
(1)制度の適用に関する同意の撤回の手続き
(2)対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明をおこなうこと
001164442.pdf (mhlw.go.jp)(厚生労働省のパンフレット)

3.両型とも共通して「健康・福祉確保措置の実施強化」が追加されます。
  健康・福祉増進措置の項目として、全員を対象とする措置として(1)勤務間インターバルや(2)深夜業の回数制限を行う、(3)労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除、個々の適用労働者の適用状況に応じて講ずる措置として、医師による面接指導を行うなどの項目が追加されました。
企業は、全員を対象とする措置からひとつ、状況に応じて講ずる措からひとつをそれぞれ実施することが望ましいとされています。

 裁量労働制は、勤務時間が成果と必ずしも結びつかないホワイトカラーについて時間に縛られない自由な働き方をさせることが可能になる点で有用な制度と言えます。今回の改正によって労働者の保護をさらに強化したものといえます。
  ただ、必要な手続きを履践していない場合には裁量労働制が有効に成立していると言えないとされる場合もあるため適正な運用が必要です。