<ポイント>
◆表明保証は、特定時点の事実関係をうたうもの
◆誓約条項(コビナンツ)は、将来にわたる義務をうたうもの
◆両者の関連を意識すると複雑な契約条項も理解しやすい
我が国においても欧米に倣ったような分厚い契約書が作成されることは珍しくなくなりました。その手の契約書を検討する際にクライアントからよく質問されるのが「表明保証」や「誓約条項」についてです。
たしかに、これらの条項はゴチャゴチャしていてわかりにくい場合も少なくありません。
表明保証はrepresentations and warrantiesの訳語で「レプワラ」という呼び方をすることもあります。
これは、契約の一方当事者が他方当事者に対して、ある特定時点における事実関係が真実であることを宣言するものです。
表明保証はそれ自体としては単に事実関係をうたうものですが、表明保証された内容が真実でない場合には、期限の利益喪失、契約解除、損害賠償などの一定の法的効果を生じる条項が適用されるように契約内容が設計されます。
表明保証は「ある特定時点における事実」を問題にしているというところが理解のポイントです。契約締結時や決済(クロージング)時など、基準となる時点が固定されているのです。静態的という言い方もできます。
誓約条項はcovenantsの訳語とされ、ややカタカナ英語っぽくコビナンツ(コベナンツ)という呼び方もします。
これは契約の一方当事者が一定事項を遵守していくことを他方当事者に誓約するものです。
こちらについても、違反した際には期限の利益喪失等々の具体的な法的効果をうたう契約条項にリンクしていくことになります。
義務の内容としては、ある事項が生じた場合にその旨を他方当事者に通知すべしという通知義務条項や、一定の行為を行ってはならない、あるいは他方当事者の承諾を得なければならないという禁止条項・承諾条項などが典型的です。
こうした事項を遵守していくというのは「将来にわたる義務」を負うということであり、時点が固定されている表明保証と対照的です。表明保証を静態的なものとすれば、誓約条項は動態的なものということになります。
表明保証や誓約条項が盛り込まれた契約書は大部にわたり解読するのが難しいケースがよくありますが、表明保証や誓約条項がどのようなものなのかを基本知識として念頭においておくだけでも理解しやすくなります。
特に、表明保証=特定時点、誓約条項=将来にわたる、というところはおさえておくべきポイントです。
この点を理解しておくと、表明保証と誓約条項がどのように関連づけられているのかもわかりやすくなります。
たとえば、ストラクチャードファイナンスでは、資金の貸し手(金融機関)が借り手企業のキャッシュフローを把握するために、借り手が開設する預金口座を限定することがよくあります。
表明保証と誓約条項に置きかえていくと、まず、借り手は融資契約締結時および実際の借入れ時において「貸し手金融機関以外の他行には預金口座を有していないこと」を表明保証します。また、借り手は、融資契約締結後、あるいは借入れ後においても「新たに他行に預金口座を開設しないこと」を誓約します。
また「売上金はすべて貸し手金融機関に開設した口座に入金すること」を誓約する場合も多いです。
これにより貸し手金融機関は借り手企業のキャッシュフローを把握しやすくなり、返済資金が確保されやすくなるという仕組みです。
例をあげて説明しましたが、わかりにくい契約条項があればご相談ください。