2001年9月17日の法律トピックスで平成13年の商法改正について掲載しました。
その時、画期的な法改正として自己株式取得(金庫株)の解禁を紹介しました。
それから約3年が経過し、先日の新聞では、ある外国の機関投資家が、取締役会決議により自己株式の取得ができるよう定款を変更することについて反対票を投ずる予定である、という記事がありましたのでこれについて少し紹介したいと思います。
自己株式の取得は、過去には原則的には禁止されていましたが、平成6年及び平成9年の商法改正によるストックオプションのための自己株式取得を認めて、原則的な禁止を緩和し、上記平成13年の自己株式取得の解禁となりました。
平成13年改正では、自己株式を取得するには定時株主総会決議により決議後最初の決算期に関する定時総会の終結のときまでに、買い受けることができる株式の種類、数及び取得価額の総額を決めることになりました。
取締役会は、この定時株主総会の決議(「授権決議」といいます)があれば、その判断により機動的に自己株式を取得できることになりました。
その後、平成15年の商法改正(平成15年9月25日施行)により、取締役会の決議によって自己株式を買い受ける旨を定款に定めることができることになりました(「定款授権」といいます)。
今年6月の株主総会の集中日はこの商法改正後最初の集中日であり、定款授権による自己株式取得ができるようにするために定款変更の議案が提出されることが予想され、冒頭の新聞記事はその一つです。
授権決議による自己株式の取得は、定時株主総会で授権枠を設定しておかなければなりません。
定時株主総会後に自己株式取得の必要性がでてきた場合でも臨時株主総会を開催して授権決議をするということはできず、翌年の定時株主総会まで待たなければならないということになります。
それでは機動的な自己株式の取得が阻害されるとして、産業界の要望により取締役会決議だけで自己株式の取得ができるようにしたのが定款授権の規定です。
ただし、自己株式の取得は定時株主総会の決議によるのが原則であり、定款授権の規定は、定時株主総会において予定のなかった自己株式の取得に対応するためのものだと考えられています。
そして、取締役会決議によって自己株式の取得を行った場合は、取得後最初に招集される定時株主総会において、買受を必要とした理由、買い受けた株式の種類、株及び取得価額の総額を報告する必要があります。
これは、取締役の経営判断について株主にチェックさせる機会を与えようとするものです。
冒頭の新聞記事は、このような事後的チェックでは意思決定過程が不明確になるということを理由とするようです。
なお、自己株式を取得するための財源は配当可能利益であり、定款授権による自己株式の取得は期中におけるものですので中間配当財源が限度となります。
そのため、期末において欠損が生じるおそれがある場合には、自己株式の取得は禁止され、もし欠損が生じた場合には、自己株式を取得した取締役は填補責任を負うことになります。
自己株式の取得について
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