平成23年12月に税務調査手続の明確化等を内容とする国税通則法等の改正が行われています。
納税者にとって知っておくべき重要な項目ですので、以下ポイントを整理してみます。
【300万円以下の白色申告者の記帳義務および記録保存義務】
個人の白色申告者のうち前々年分あるいは前年分の事業所得、不動産所得または山林所得の合計額が300万円を超える者に必要とされていた記帳と帳簿書類の保存が、これらの所得を生ずべき業務を行う全ての者(所得税の申告が必要のない者を含みます。)について、平成26年1月から必要になります。
【更正の請求期間の延長等】
納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合には、税金の減額や還付金額の増額を求める「更正の請求」をすることができます。
更正の請求をすることができる期間が、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について5年(改正前1年)に延長されています。
その際には、更正の請求をする理由の基礎となる「事実を証明する書類」の添付が必要です。
なお、故意(過失を除く)に内容虚偽の更正の請求書を提出した場合には、法律に罰則の定めがあります。
※平成23年12月1日以前に法定申告期限が到来した国税について、「更正の請求」をすることができる期間を過ぎた場合であっても、税務署長が増額更正を行うことがきでる期間内であれば、税額の減額や還付金額の増額を求める「更正の申出」をすることができます。
【税務調査手続】
従来からの運用を踏まえて、税務調査手続が国税通則法において、法定化されています。
この改正は、原則として平成25年1月1日以後に開始する税務調査から適用されています。
1、事前通知
税務調査に際しては、原則として、納税者に対し調査の開始日時・開始場所・調査対象税目・調査対象期間などが事前に通知されます。
なお、合理的な理由がある場合には、調査日時の変更の協議を求めることができます。
ただし、税務署等が保有する情報から、事前通知をすることにより正確な事実の把握を困難にする、または調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、事前に通知せずに税務調査が行われることがあります(事前通知の例外事由といいます)。
法定化を受け、事前通知を要しない場合として通達に示された例外事由は以下のとおりです。
(1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第127条第2号または同条第3号に掲げる行為(税務職員の質問に不答弁や偽りの答弁、帳簿書類の提示に応じない、偽りの帳簿書類の提示等)、を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
(2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。
(3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、または偽造することが合理的に推認される場合。
(4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法または不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳または書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。
(5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者もしくは取引先またはその他の第三者に対し、前記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、または調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収しまたは共謀することを含む)ことが合理的に推認される場合。
(6) 事前通知をすることにより、税務代理人以外の第三者が調査立会いを求め、それにより調査の適正な遂行に支障を及ぼすことが合理的に推認される場合。
(7) 事前通知を行うため相応の努力をして電話等による連絡を行おうとしたものの、応答を拒否され、または応答がなかった場合。
(8) 事業実態が不明であるため、実地に臨場した上で確認しないと事前通知先が判明しない等、事前通知を行うことが困難な場合。
2、質問事項への回答と帳簿書類の提示または提出
税務調査の際には、質問検査権に基づく質問に対して正確に回答し、求めに応じ帳簿書類などを提示または提出することとされています。
なお、質問事項に対し偽りの回答をした場合もしくは検査を拒否した場合、または正当な理由がなく提示しない場合、あるいは偽りの記載をした帳簿書類の提示もしくは提出をした場合には、法律上の罰則があります。
3、帳簿書類の預かりと返還
調査担当者は、税務調査において必要がある場合には、納税者の承諾を得た上で、提出された帳簿書類などを預かります。
その際には、預り証が渡されます。
預かる必要がなくなった場合には、速やかに返還されます。
4、調査結果の説明と修正申告や期限後申告の勧奨
税務調査で、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、調査結果の内容を説明し、修正申告や期限後申告が勧奨されます。
ただし、修正申告等が勧奨される場合には、「修正申告等をした場合は不服申立てはできないが、更正の請求はできる」ことが説明され、その旨を記載した書面が渡されます。
5、増額更正期間制限の延長
平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について、増額更正を行うことができる期間が5年(改正前3年)に延長されています。
6、処分理由の記載
税務署長等が、更正または決定などの不利益処分や納税者からの申請を拒否する処分を行う場合には、その通知書に処分の理由が記載されます。
7、更正または決定をすべきと認められない場合の通知
税務調査の結果、申告内容に誤りが認められない場合や、申告義務がないと認められる場合などには、その旨が書面により通知(いわゆる是認通知)されます。
8、再調査
税務調査の結果に基づき修正申告書等が提出された後または更正もしくは決定などをした後や、是認通知をした後においても、税務調査の対象とした期間について、新たに得られた情報に照らし非違があると認められるときは、改めて税務調査が行われます。