社外取締役をめぐる最近の議論状況について
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<ポイント>
◆社外取締役を義務づける会社法改正の是非
◆社外取締役の選任を促進するために「監査・監督委員会」を新設することの是非

現在、法務省では会社法制の見直しを検討しており、社外取締役の選任を義務づけるかどうかの議論が改めて活発になっています。
この議論の主たる対象である上場会社の過半数は社外取締役を選任していません。

社外取締役には、会社外部の者にもわかるように経営状況について経営者に説明をさせ、さらには経営者の暴走などを防止するという経営者を監督する機能が期待されています。
また、社外取締役には、外部的視点から、戦略的、効率的に企業価値を高めるために経営者に助言するという機能も期待されています。
このような社外取締役の有用性は認められるとしても、会社法で一律に社外取締役の選任を義務づけるかどうかについては賛否両論があります。
この議論は、監査役会設置会社(監査役の半数以上が社外監査役であり、このタイプの会社が上場会社の大部分を占めます)に社外取締役の選任を義務づけるかというかたちで行われています。

社外取締役の選任を義務づける理由として、取締役会での議決権を有する社外取締役による監督が必要であることや社外取締役からの助言により企業価値を高めることを重視することがあげられています。
特に、海外の投資家は社外取締役による監督が必要であると考えているようです。
一方、社外取締役の選任を義務づけない理由として、現行制度の下でも社外監査役が経営者を監督する機能を果たせること、社外の人をどのように利用して企業価値を高めるかは経営者が判断することであり一律に義務づける必要はないことがあげられています。
また、社外監査役(大部分の上場会社で選任されています)に加えて社外取締役の選任まで義務付けると、人材の発掘を含めて会社に大きな負担を強いることになるとも言われています。
私見としては、社外取締役の選任を義務付けるべきではないと考えています。
社外監査役でも、経営者に対して会社外部の者にもわかるように経営状況の説明を求めることはできますし、経営者から社外監査役に企業価値を高めるための助言を求める場合もあると思います。
また、社外取締役が全取締役の半数に満たない場合には、代表取締役の選任、解任を含めた取締役会決議事項について社外取締役がイニシアチブをとれるわけではありません。
社外取締役が議決権をもつことが、社外取締役の選任を義務付ける決定的な理由にはなりません。
それでも社外監査役と社外取締役を選任しなければならないというのは、たとえ上場会社であっても比較的小規模な会社では人材発掘、費用の点で負担は過大だと思います。
社外取締役を役立てるかどうかは各会社の自主的な判断に任されるべきです。

法務省での議論では、監査役会設置会社に社外取締役の選任を義務づけることが難しいとすれば、社外取締役をより活用するために新しいタイプの会社をつくることも提案されています。
この新タイプの会社は、監査役に代わって、社外取締役がメンバーとなる監査・監督委員会(仮称)が監査等を担うというものです。
新タイプの会社では社外取締役の選任が必要となりますので、その点で海外投資家に配慮したものといえます。
また、新タイプの会社には委員会設置会社のような指名委員会や報酬委員会はありません。
委員会設置会社が採用されない理由として人事や報酬について外部の人に決定を委ねることへの抵抗感が指摘されていますが、新タイプの会社ではそのような抵抗感は生じないでしょう。
ただ、人事や報酬についての決定に関与できない社外取締役に高い監督機能、企業価値を向上させる機能を期待できないのではないかという疑問があります。
この新タイプの会社の具体的な仕組みについては議論の途中ですが、現行の社外監査役と同数の社外取締役の選任を義務づけるようにすれば、必要な社外の人数は同数ですので、人材発掘、費用の点での会社の負担は同程度かもしれません。
しかし、社外取締役の方が社外監査役より高い機能が期待できるといえるのかという疑問は残ります。
さらに、現行制度の下では、監査役の任期は4年であるなどの身分保障があるのに対して、社外取締役の任期は1年または2年なので、経営トップに直言できないのではないかという不安もあります。
結局、新タイプの会社の方が現行の監査役会設置会社より高い機能を持つということが論証されなければ、使われない制度が増えるだけということにもなりかねません。
そうすれば、新タイプの会社をつくることにより社外取締役を活用するという目的も達成できないことになります。