最近の税制改正は、成立時期が様々な上に適用時期も成立から離れているものもあり見落とし易くなっています。
そこで今回は、実務的観点から法改正等に伴い平成24年に適用が開始される主な制度を整理してみます。
【平成24年1月から適用】
1、特定居住用財産の買換え特例
所有期間が10年を超える特定の居住用財産について買換え・交換の特例が適用できる譲渡資産が、1億5千万円以下のものに引き下げられました。
2、特定事業用資産の買換え特例
所有期間が10年を超える事業用の土地・建物等から国内にある土地・建物、機械・装置等への買換えを行った場合の買換え資産の対象となる土地について範囲が制限されました。
3、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置
若年世代への資産の早期移転や省エネルギー・耐震性を備えた良質な住宅ストックを形成する観点から、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税限度額が、表1のとおり見直されました。
【平成24年4月以後取得分から適用】
<減価償却制度>
減価償却資産の定率法の償却率が、定額法の償却率の2倍に引き下げられました。
【平成24年4月27日以後契約分から適用】
<法人契約のガン保険等の保険料の取扱い>
法人契約の終身保障タイプのガン保険については、通達改正により前払い期間を経過するまでの期間にあっては、各年の支払保険料の額のうち2分の1に相当する金額を前払金等として資産に計上し、残額は損金に算入される等の見直しが行われています。
※前払期間・・・加入時の年齢から105歳までの期間を計算上の保険期間とし、当該保険期間開始の時から当該保険期間の50%に相当する期間をいいます。
【平成24年4月1日以後に開始する事業年度から適用】
1、貸倒引当金
大企業および大企業の100%子会社については、適用が除外されています(経過措置あり)。
2、法人税率
諸外国に比べて高い水準にある法人実効税率を見直すため、課税ベースの拡大等により財源を確保しつつ、法人税の税率が表2のように引き下げられました。
3、欠損金の繰越控除限度額
中小法人等を除き、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得金額の80%相当額が繰越控除限度額となりました。
4、課税売上高5億円超の事業者の仕入税額控除
消費税の課税期間の課税売上高が5億円を超える事業者は、たとえ課税売上割合が95%以上であっても、個別対応方式から一括比例配分方式により、その課税期間の仕入税額控除額の計算を行うことになりました。
(改正の影響)
事業者は、非課税売上となる銀行利息収入が通常あるため、課税仕入等の区分を厳密に行う必要があります。
ほとんどのケースで、個別対応方式を選択した方が有利になると思われますが、この方式の場合、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」および「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」に区分します。
非課税売上が銀行利息収入のみであった場合でも、全体の業務を行う部門で生ずる管理費等は、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」と考えられるので、注意が必要です。
【平成24年7月1日以後適用】
<源泉徴収に係る所得税の納期の特例>
7月から12月までの間に支払った給与等および退職手当金等につき徴収した源泉所得税の納期限が翌年1月20日(改正前1月10日)となりました。
【平成24年分より適用】
<生命保険料控除>
生命保険料控除が改組され、(1)一般生命保険料控除、(2)個人年金保険料控除、(3)介護医療保険料控除の3本立てとなりました。
【平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金額から適用】
<繰越欠損金の繰越期間>
繰越欠損金の繰越控除期間が7年から9年となっています。
なお、その欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類の保存が適用要件とされています。