【商法の改正】
従来、株式とは出資の最低単位であり、その内容は原則として均一でなければならず、自己株式の買取りは利益による償却を伴う場合を除いて、実質的には資本金の払戻にあたるとして許されませんでした。
しかし、平成13年から翌平成14年にかけての商法改正によりその制度は大きく変わりました。
きわめて法技術的な内容ですが、株式会社の資金調達に関わることですので、ここに整理してご紹介いたします。
【株式の単位】
まず、出資の最低単位であるという点は変更がありませんが、従来強制的に券面額で5万円に相当する数と定められていた単位株から、会社が定款によって自由に定める一定の数をもって1単元(1議決権)とすることができるようになりましたし、「単元」制度を採用しないこともできます。
また、従来の主流であった額面株式がなくなり、すべての株式が無額面株式になりました。
さらに、会社が発行することのできる株式は発行済み株式の4倍を上限とする授権資本制度が、株式の譲渡制限をしている会社については撤廃され、定款で定められる発行する株式数に制限がなくなりました。
【株式の内容】
株式の内容については、会社が定款により、配当、残余財産、利益による株式の償却の優先順位等を自由に設定した数種の株式を発行できるようになりました。
特に株式の譲渡制限をしている会社は、各種類ごとに決まった数の取締役や監査役の選任権を有するように定めることもできるようになりました。たとえば、A種株主はA種株主だけで取締役を3名、B種株主は同様に2名選任でき、合計5名の取締役会で会社を経営するということもできるようになったのです。
【自己株式の買取り】
株式の買取りについては金庫株が解禁になり、会社は、定時株主総会で買取る株式を定めることができるようになりました。ただし、会社の利益の範囲内でしか株式を買取ることができないという制限があります。
また、このようにして買取った株式については、会社は議決権を行使することはできず、株式を売却する際には新株発行の手続きと同様の手続きを経ることになります。
【今後の改正】
平成13年・14年改正により株式制度についての改正は一段落したようですが、今後、株券の発行義務がなくなり、また株式の譲渡に関して株券の交付を要しないという改正がなされるようです。
従来は、株券不所持制度により株券の不発行を制度として認めており、また保管振替決済制度により上場株式の売買の際に現実に株券の交付は不要とされていました。
しかし、これらの制度は株券の発行を猶予し、株式譲渡時に現実の株券の交付を求めないということだけでした。商法226条の「会社は成立後または新株の払込期日後遅滞なく株券を発行することを要す」、同205条の「株式を譲渡するには株券を交付することを要す」という条文は残っており、原則には何ら変更はありませんでした。これらの制度は現状とはかなり離れており、変更が求められてきたものです。
新株予約権についても同様に、今後、新株予約権証券の発行義務がなくなり、また譲渡に関して新株予約権証券の交付を要しないという法改正がなされるようです。