消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正について(その2)
【関連カテゴリー】

<ポイント>
◆事業者の努力義務が複数追加された
◆被害回復裁判手続の活用を図るための改正がされた

引き続き消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正について解説いたします。

第1 事業者の努力義務の拡充
本改正により事業者には様々な努力義務が課せられるようになりました。以下では、消費者契約法の条文の順序に囚われずに追加された努力義務をピックアップして整理しようと思います。
1 勧誘時の情報提供について
(1)年齢や心身の状態も考慮した情報提供
従前、事業者は、消費者契約の勧誘時において、消費者の知識・経験を踏まえて情報提供に努めなければならないとされていましたが、本改正により知識・経験だけでなく年齢・心身の状態も総合的に考慮した情報提供に努めなければならないとされました。
(2)定型約款の表示請求権についての情報提供
事業者は、定型取引合意に該当する消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者が定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じているときを除き、消費者が定型約款の表示請求を行うために必要な情報を提供するよう努めなければならないとされました。
2 解約料の説明について
(1)消費者に対する努力義務
事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償を予定し、または、違約金を定める条項に基づき損害賠償または違約金の支払を請求する場合において、消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定または違約金の算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないとされました。
(2)適格消費者団体に対する努力義務
適格消費者団体は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定する条項、または、違約金を定める条項におけるこれらを合算した額が平均的な損害の額を超えると疑うに足りる相当な理由があるときは、事業者に対し、その理由を示して、上記条項の算定根拠を説明するよう要請することができるとされました。この場合、事業者は、算定根拠に営業秘密が含まれる場合その他の正当な理由がある場合を除き、要請に応じるよう努めなければなりません。
3 解約権の行使に関する情報提供について
事業者は、消費者から求められた場合、消費者契約により定められた消費者の有する解除権の行使に関して必要な情報を提供するよう努めなければならないとされました。

第2 消費者裁判特例法(被害回復裁判手続)の改正について
消費者裁判特例法が改正され、被害回復裁判手続が改正されました。この手続はマイナーで、存在を知らない方も多いと思うので、本稿ではその概要と改正の概略を記載しようと思います。
被害回復裁判手続は、一言でいうと、特定適格消費者団体が消費者に代わって集団的な消費者被害の回復を実現する制度です。手続きは二段階に分かれており、第一段は共通義務確認訴訟といい、事業者が消費者に対して責任を負うかを判断する訴訟手続になります。これにより責任が認められる場合には第二段階の手続き、簡易確定手続に進みます。簡易確定手続では事業者が誰にいくらを支払うかを確定します。
本改正では、被害回復裁判手続の利用が非常に少ないこと(5年間で訴訟4件)から、より利用しやすい制度になることを目指して概ね以下のような改正がなされました。
・一定の場合に慰謝料の請求が可能に
・事業者以外の個人(例えば悪質商法関係者)を被告に追加できるように
・和解の早期柔軟化(上記の一段階目の手続き(共通義務確認訴訟)で様々な和解が可能に)
など