民事再生手続外の保証債務と消滅時効
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<ポイント>
◆民事再生手続が開始された後に手続外の保証債務の消滅時効が進行する時期
◆時効期間は5年か10年か

1 会社の借り入れ債務(主たる債務)について連帯保証をしていたところ、会社が民事再生手続(以下「会社更生手続」も同様)を開始して認可決定を得た場合、保証債務の消滅時効はどうなるのでしょうか。
主たる債務については、再生債権の届出によって時効中断の効力を生じますが(民157条)、これが保証債務に及ぶことに問題はないといえます(民457条1項参照)。では、保証債務について中断された時効が改めて進行を開始するのはいつからなのでしょうか(問題1)。また改めて進行する保証債務の消滅時効の期間は何年なのでしょうか(問題2)。

2 保証債務の消滅時効はいつから進行が再開されるのか(問題1)
保証債務の消滅時効がいつから進行を開始するかは、法文上必ずしも明確ではありません。この点、旧会社更生法の時代の判例ですが最判昭和53年11月20日があります。同判決では、更生計画認可決定の確定時から更に進行を開始する判示しています。
民事再生手続においもて同様に考えられます(下級審判例として、東京地判平成26年7月27日、東京地判平成29年7月21日(控訴事件)。

3 何年で消滅時効が成立するのか(問題3)
(1)主たる債務の消滅時効期間は何年でしょうか。会社の主たる債務は商事債権(商522条)として、消滅時効の期間は5年であることが多いでしょう。しかし、民事再生手続では、再生計画認可決定の確定により再生債権者表の記載が確定判決と同一の効力を有する(民再180条1項,2項)とされ、これによって、再生債権者表に記載された主たる債務の消滅時効は、10年に伸長されることになります(民174条の2第1項。破産債権について最判昭和44年9月2日参照)。
(2)では、かかる主たる債務の消滅時効期間の伸長は保証債務にも及ぶのでしょうか。
ア 民事再生手続外の一般論では、主たる債務の消滅時効期間が確定判決によって10年に延長される場合には、保証債務の附従性を根拠として同じく10年に変ずるとされます。
こうした保証債務の附従性から考えると、主たる債務の消滅時効が10年に伸長されたのであれば、保証債務の消滅時効もこれに従うと考えることができます(前掲平成26年東京地裁判決。前掲平成29年東京地裁判決)。
イ 他方で、民事再生法では「再生計画は、・・・再生債権者が再生債務者の保証人・・・に対して有する権利・・・に影響を及ぼさない」(民再177条2項)と規定されています(会更203条2項も同旨)。再生計画認可決定の確定によって主たる債務について一部免除や弁済期の変更の効果が発生しても、保証債務の附従性が否定されることが規定されています(内容の附従性)。また、主たる債務が再生計画に基づく弁済によって消滅しても、保証債務は存続します(消滅における附従性)。また、別途移転することにもなります(移転の附従性)。
このように、保証債務は、再生計画の認可決定確定により主たる債務に対する付従性の基本的部分を喪失してしまうことを考えると、消滅時効についても附従性を維持する必要はなく、5年で消滅時効が成立するとも考えられます。なお、前掲最高裁昭和53年判決は、更生計画により免除された債権が基本債権であるから、商事債権として5年の消滅時効にかかると判示した原審福岡高裁の判断を維持しています。
ウ 近時の下級審裁判例は10年説が有力です。しかし、私見ではありますが、保証被害の実態等も考えるとわざわざ長期の時効期間を認める必要はないのではないか、むしろ時効期間を5年として時効の援用が権利の濫用に該当するという構成の方が柔軟性のある解決が導けるのではないかと考えております。