株主提案は増加傾向
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<ポイント>
◆株主提案が過去最高に
◆上場会社では議題提案権、議案要領通知請求権は一定の要件を満たす株主のみが行使可能
◆議案提案権はすべての株主が行使できる

今年(2023年)6月下旬に定時株主総会を行った上場会社で、株主提案を受けた会社は90社、総議案数は348にのぼるとする報道がありました。また、過去最高となったと報じているものもあります。株主提案による議案が可決された事例も起こっています。株主提案が増加傾向にあることは間違いないものといえます。なお、上記の株主提案のうちの相当数がいわゆるアクティビティストによるものと思われます。
これまで株主提案権についてはメルマガで紹介してきましたが、近時の増加をうけて、あらためてまとめて述べたいと思います。

場会社においては(上場会社は取締役会設置会社であり、まずはこのタイプの会社を念頭に置きます)、株主総会の議題(「剰余金処分の件」、「取締役○名選任の件」、「定款一部変更の件」などの会議の目的となるものです)及び議案(「1株あたり30円を配当する」、「A、B、C氏を取締役として選任する」といった議題についての具体的な決議内容となるものです)は取締役会で決議し、株主に対して通知します。
これらの取締役会側の提案に対して、株主からの提案が株主提案です。株主提案権は、一般的に、以下の「議題提案権」、「議案要領通知請求権」、「議案提案権」を含むものとされています。
まず、一定の要件を満たした株主のみが、議題の提案をすることができます(議題提案権)。
この要件とは、6ヶ月前から引き続き総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を有することです(定款でこれより要件を緩和することは可)。
議題提案権の行使は、総会の会日の8週間前(同上)までに請求することが必要です。
また、上記と同じ要件を満たした株主のみが、総会の目的事項につき当該株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知するよう請求することができます(議案要領通知請求権)。総会の会日の8週間前までの請求が必要であることも同様です。
なお、令和元年会社法改正により議案要領通知請求権を行使する際、当該株主が提案できる議案の数の上限を10に限定できることについては「令和元年会社法改正(第2回)~議案用超通知請求権に伴う株主提案の制限について~」をご参照ください。
さらに、すべての株主は、株主総会において議案(取締役会提出議案に対する修正提案等)を提出することができます(議案提案権)。一般的に、株主による修正動議と呼ばれるものです。剰余金の増減額(減額についてはできないとする論者もいるようです)、取締役の選任予定人数内における人選の変更などがあります。
ただし、法令定款違反の場合、過去に議決権の10分の1(定款による引き下げは可)以上の賛成が得られなかった議案と実質的に同一のものであって、当該賛成が得られなかった日から3年を経過していない場合には、会社はその提案を拒絶できます。
なお、議案提案権(修正動議)が認められる範囲については、個別具体的には議論がありうるところであり、興味のある方は商事法務2328号などをご覧ください。

上場会社以外の会社(ここでは全株式譲渡制限会社を念頭におきます)についてですが、議題提案権に関して、取締役会非設置会社ではすべての株主に議題提案権がありますし、8週間前までの請求の必要もありません。従って、株主総会の場で議題提案権を行使することが可能です。取締役会設置会社でも株式の保有期間6ヶ月の要件はありません。
議案要領通知請求権についても、取締役会非設置会社ではすべての株主に議案要領通知請求権があります。ただし、8週間前までの請求の必要があります。取締役会設置会社でも株式の保有期間6ヶ月の要件はありません。
議案提案権はすべての株主にあり、法令定款違反等の場合には会社は提案を拒絶できるのは上記と同様です。