日本版SOX法(≒金融商品取引法)

本年6月に「証券取引法等の一部を改正する法律」が公布され、その第3条によって証券取引法の名称が「金融商品取引法」に変更されることになりました。施行はもう少し先です。
それに伴い、金融商品取引法には金融先物取引法やその他の関連法が取り込まれ、また加除修正等された結果、従来の証券取引法は大きく変わります。ただ、その正式名称「金融商品取引法」よりも「日本版SOX法」又は「J-SOX法」の方が通りがいいようです。最近の新聞記事でも「日本版SOX法」という言葉をよく目にします。今回はこれを取り上げてみました。

金融商品取引法制定の主な目的は、有価証券に留まらず、あらゆる金融商品を横断的に規律することです。
金融商品取引法が日本版SOX法と呼ばれるのは、エンロン事件に端を発した証券スキャンダルの再発を防止するべく2002年にアメリカで制定されたサーベンス・オクスリー法をお手本にしているからです。ちなみにサーベンス・オクスリー法は、サーベンス(Sarbanes)上院議員とオクスリー(Oxley)下院議員が法案を提出したことから両氏の名前をとってそう呼ばれています。

もっとも、米国SOX法自体はそれまでの証券取引法(Securities Act of 1933, Securities Exchange Act of 1934)に条文を追加したり、削除したり、修正したりすることを定めた法律なので、形式は上記「証券取引法等の一部を改正する法律」と同様です。しかし、日本版SOX法は金融商品取引法そのものを指すことが多いようです。また、日本版SOX法というときは、金融商品取引法により新設された、財務報告に係る内部統制の強化等に関する制度の規定に注目し、これに関する言及する場合が多いようです。

内部統制強化については、金融商品取引法第24条の4の4が次のとおり定めています。
「事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定めるところにより評価した報告書を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。」
簡単に言えば、会計書類等に嘘を書かないような体制を整えて、そのような体制であること保証することを義務付けているということです。現在もこれに類似する報告の制度はありますが、義務的ではなく任意によるものです。報告書の詳細は内閣府令で定めることになっていますが、現在のところ、まだ発令されていません。

米国SOX法及びこれに基づく細則では、内部統制について、経営者によって検討された財務報告における重大な欠陥の開示を義務付けており、一つでも重大な欠陥が認められる場合には内部統制が有効であると保証してはならないと規定されています。今後、発令される内閣府令でも参考にされることと思います。
なお、内部統制報告書は、利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないこととされています。
その他、日本版SOX法では、有価証券報告書提出による開示については半期報告であったのが米国と同様に四半期報告になりました。