新会社法による株式制度の改正(会社の自己株式取得を中心にして)
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会社法が制定され、現時点において施行日までは決まっていませんが、来年4月か5月にも施行が予想されます。今回は、株式制度の改正のうち、会社の自己株式取得に関して報告します。
従来、株式会社が自己株式を取得することは厳しく制限されていましたが、平成6年の商法改正から徐々に緩和されて、金庫株の解禁により、定時株主総会の決議(授権決議)でできるようになり、現行法では、定款の定め(授権定款)がある場合には、取締役会決議による機動的な自己株式の取得も可能になりました。また、自己株式の取得を、株主から、または会社から請求できる株式を発行することもできるようになりました。会社は、取得した株式を金庫株として保有したり、償却したりすることができます。
今回の会社法では、これらの制度を整理、変更しています。

授権定款については、ほぼ現行法と同様ですが、授権決議については定時株主総会以外の株主総会の決議でも可能になりました。
自己株式の取得について特別な定めのある株式としては、株主にイニシアチブがあるもの(取得請求権付株式)と、会社にイニシアチブがあるもの(取得条項付株式)が定められています。つまり、会社による取得を株主側から請求できるのが取得請求権付株式であり、一定の事由の発生を条件に会社が取得することができるのが取得条項付株式です。
会社が、これらの株式を発行する場合には、前もって定款で定めておく必要があります。それは、発行する全部の株式である場合も種類株式として発行する場合も同じです。
他方、会社が発行する株式が1種類であり、その株式が取得条項付きでない場合、それを取得条項付株式に変更しようとすれば、株主総会の特別決議でも足らず、株主全員の同意が必要です。また、会社が数種の株式を発行し、そのうちある種類の株式のみを取得条項付株式に変更しようとすれば、当該種類株主全員の同意が必要になります。

会社の発行する株式全部が取得条項付株式である場合、一定の条件が満たされれば会社が全ての株式を取得することになります。この場合、会社は自己株式について議決権を行使することができませんから、株主として議決権を行使する者がいなくなります。このような不都合を回避するには、事前に定款変更等により取得条項付でない株式を発行できるようにしておき、会社が取得条項付株式を取得した後に、取得条項付でない株式を発行すればよいということになります。ところで、取得条項付株式を会社が無償で取得して償却し、その際に取得条項付きでない株式を発行すれば、100%の減増資が実現することになります。これは、会社再建の手段として利用される手法です。

種類株式として取得条項付株式を発行する場合、一定の事由の発生とは別に、株主総会の決議を条件とすることを定めることができます。このような取得条項付株式を発行していれば、株主総会の普通決議で会社は当該種類株式を取得することができます。敵対的買収者が取得条項付株式を買い進めてきた際、株主総会で普通決議をして会社が敵対的買収者から株式を取得すれば、敵対的買収者の議決権の行使を阻止することができます。これは会社防衛策として会社法により可能になった手法です。

ところで、株式の譲渡について、現行法では、株券不発行を定款で定めている場合には株券の交付が不要とされています。これに対して、会社法では、株券の発行を定款で定めている場合には株券の交付が必要とされており、原則と例外が逆転することになります。株券の発行を定款で定めない会社が一般的になると予想されますが、そうすると上記取得条項付株式の取得についても株券の回収という手間もなく、自己株式の取得を簡便に行うことができるようになるでしょう。