建物のサブリースと賃料減額請求
【関連カテゴリー】

平成15年10月21日、最高裁は、建物のサブリースの場合にも賃料減額請求が認められるという判決をだし、新聞でも大きく報じられたので、今回はこの判決について簡単に解説したいと思います。

【サブリース】
サブリース契約というのは法律上確定した定義があるわけではありませんが、一般的には、地主が不動産会社のためにビルを建築して賃貸する契約であり、不動産会社がこれを転貸することが前提となっています。
つまり、ビルの所有権は地主にありますが、実際の使用者である店子の募集、管理は不動産会社が行い、地主には、不動産会社から支払われる賃料により建物の建築資金や金利を支払うのに必要な収入が保証される形になっています。
そのため、不動産会社が地主に支払う賃料はビルの建築費用を基礎として計算されており、また、地主と不動産会社の間の賃貸借期間が長期間に及ぶことが多いと言えます。
このような契約形態で、店子が不動産会社に賃料減額請求をしてきたり、当初予定していた賃料を引き下げなければ店子が見つからなくなったりすれば、不動産会社は逆ザヤとなり、地主に対しても賃料減額を求めたくなります。
しかし、地主にはビル建築のための借入金の返済等があり、不動産会社からの賃料収入が減少すると深刻な問題になります。そのため、このような賃料減額請求が認められるかが争われてきました。

【賃料減額請求】
賃料増額、減額請求というのは、長期間にわたることが多い賃貸借契約では、契約時に決めた賃料が地価を含めた物価の高騰、下落等によってあまりに安すぎたり、高すぎたりした場合に貸主から賃料の値上げを要求したり、借主から賃料の値下げを要求したりする制度です。
このような要求ができることは契約書にも記載されているのが通常ですが、契約書に記載がなくとも借地借家法により可能です。
もちろん、このような要求を受けた場合に、承諾しなければならないというものではありません。
要求を受けた方が承諾せずに、当事者間で、また、裁判所での調停で話し合いがつかなければ、裁判により賃料を増額したり、減額したりすることが適当かどうかが判断されます。
この場合、賃料の減額、増額を要求した時点において、その要求が正しかったかどうかが判断され、その時点から効力が生じることになります。
そのため、たとえ裁判の途中で地価が下がって、賃料の減額請求が認められる事態となっていても、その地価が下がった時点で改めて賃料の減額請求をしなければならないのが原則です。
このような賃料減額請求は、地価が右肩上がりの時代には考えられなかったのですが、昨今の不動産不況で、俄然、注目を浴びてきたものです。

【今回の判決について】
以上のように、賃貸借契約であれば賃料減額請求が認められるのが原則ですが、サブリースの場合には、不動産業者が一括して借りて、賃料の保証をしてくれるということが前提で契約をしているため、ストレートにこの原則を適用していいかが争われたものです。
裁判所は、原則を適用して賃料減額請求権自体は認めたのですが、サブリースの場合にはその請求が認められるかどうかは厳しく判断することを示唆しました。
建物の賃貸借契約である以上、借地借家法が適用されるべきですが、転貸賃料の取得を目論む不動産業者のリスク負担義務や借地借家法の立法趣旨である弱者たる借主保護という構図が当てはまらないことから考えれば、サブリースの場合には賃料減額請求権が制限されるべきであることは当然であり、最高裁の判断は至極妥当なものだと思われます。