廃業の方法について(その2)
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◆特定調停手続を利用した廃業の概要

前回は、廃業に際して平成29年1月27日に日本弁護士連合会(以下「日弁連」)から公表された「事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き」(以下「本手引」)を活用する方法があることを説明しました。
今回は本手引の内容について概要を説明いたします。

1 本手引による特定調停に要する費用
(1)裁判所手数料(調停申立てに当っての印紙代・予納郵便切手代)
(2)弁護士等の専門家に要する費用
事業規模・債権者数・従業員数等により費用は異なりますので、弁護士に確認してください。また企業規模が大きいときは公認会計士・税理士の費用が別途必要となることがあります。

2 手続を利用するために
手続を利用するためには、概ね以下のような条件を満たす必要があります。
(1)手続を利用できる方
① 事業者(法人・個人)
既に発生している債務(既存債務)を弁済することができない方、または近い将来において既存債務を弁済することができないことが確実と見込まれる方。事業者が法人の場合は債務超過(負債総額が資産総額を超える状態)又は近い将来において債務超過となることが確実と見込まれる方
② 保証人について
保証人についても,事業者と一体として手続を進めることができるケースもあります。その場合、経営者保証ガイドラインの要件を充足する必要があり、a)弁済について誠実である,b)財産状況等を適時適切に開示している,c)免責不許可事由のおそれがないなどの諸条件を満たす必要があります。
(2)一般商取引債権、税金、労働債権等の弁済
基本的には、特定調停の対象としない一般商取引債権、労働債権、税金などの公租公課が全額支払い可能であることが必要です。
(3)本手続で対象とする債権者(金融機関等)
基本的には金融機関です(信用保証協会を含みます)。ただし、弁済計画の履行に重大な影響を及ぼす恐れのある債権者については,金融機関以外でも対象とする債権者に含めることが考えられます。
(4)金融機関等との事前協議及び同意の見込み
金融機関等との間で清算型弁済計画案について事前協議を行いますが、特定調停手続の申立て前に各金融機関等から調停条項案に対する同意を得られる見込みが必要となります。ただし、ここでの同意には、積極的に賛成することはできないが、敢えて反対もしないという消極的同意も含まれます。
金融機関との交渉、及び弁済計画案の作成は弁護士等の専門家に相談するのが望ましいです。
(5)労働組合等との協議
事業者が,労働組合等と清算型弁済計画案の内容等について話合いを行った又は行う予定であることが必要です。
(6)法的倒産手続(破産など)が相応しい場合でないこと
次のいずれにも該当しない場合でなければなりません。
① 債権者間の意見・利害の調整が不可能又は著しく困難。
② 否認権行使や役員の経営責任などの問題がある。
③ 個別の権利行使の着手が開始されていること。

3 手続の進行
金融機関等の同意をうるための交渉に時間をかけることとなります。
特定調停手続自体は、債権者との事前協議がまとまってからの申立てとなりますので、おおよそ1~2回ほど期日が開かれるだけで終了するのが一般的です。

以上が、特定調停手続を利用した場合の手続の概要です。この手続には他にもいくつか条件がありますので、実際に利用する場合には弁護士等の専門家に相談して手続を進めるようにしてください。