平成24年度の税制改正は、成長戦略に資する税制、課税の公平のための租税特別措置等の見直し、平成23年度税制改正における積残し事項の一部取入れ等によって構成されています。
現在、政府は、社会保障強化と財政健全化を同時に達成するため、社会保障と税の一体改革の検討を進めており、その主要財源である消費税を含めた税制抜本改革が後に控えているので、平成24年度税制改正は、やや小粒となっています。
以下、主なものについてポイントを整理してみます。
《改正タイムスケジュール》
主要項目は、下記のようになります。
なお、24年度改正ではありませんが、復興増税等適用期日が確定したものも記載しました。
平成24年
1月
・低炭素省エネ住宅ローン控除〈減税〉
・住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置〈減税〉
4月
・法人税率4.5%引下げた後、法人税額10%の復興特別法人税を上乗せ(3年間)〈減税〉
・相続税の連帯納付義務の解除〈減税、増税どちらともいえない〉
7月
・源泉所得税納期の特例(7~12月分は翌年1月20日に統一)〈どちらともいえない〉
平成25年
1月
・給与所得控除の上限設定〈増税〉
・特定支出控除の見直し〈減税〉
・役員退職手当等の課税方法の見直し〈増税〉
・所得税額の2.1%の復興特別所得税を上乗せ(25年間)〈増税〉
平成26年
6月
・個人住民税均等割を年1,000円増額(10年間)〈増税〉
【個人所得課税】
1、給与所得控除の見直し
(1) 給与所得控除の上限設定
その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の上限が設けられます。
(2) 特定支出控除の見直し
特定支出の範囲に次の支出が追加されます。
・職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費
・職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の購入費および職務に通常必要な交際費(勤務必要経費)
(注)その年中に支出した勤務必要経費の金額の合計額が65万円を超える場合には、65万円が限度となります。
2、退職所得課税の見直し
役員等としての勤続年数が5年以下の法人役員等が支払いを受ける退職所得の課税方法について、退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置が廃止されます。
3、省エネ住宅ローン減税
高い環境性能(低炭素)を満たす住宅を対象に、税額控除の上限が400万円(平成24年居住の場合)に引き上げられます。
4、源泉所得税の納期の特例
源泉徴収に係る所得税の7月から12月分についての納期限が翌年1月20日(現行1月10日)とされます。
【資産課税】
1、固定資産税・都市計画税の見直し
住宅用地の負担の据え置き特例が段階的に縮小されます。
2、住宅購入資金の贈与税の非課税
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置は、次によります。
(1) 非課税限度額(現行1,000万円)が次のとおりになります。
・贈与年が24年中
省エネ・耐震住宅の場合・・・1,500万円 左記以外の住宅の場合・・・1,000万円
・贈与年が25年中
省エネ・耐震住宅の場合・・・1,200万円 左記以外の住宅の場合・・・ 700万円
・贈与年が26年中
省エネ・耐震住宅の場合・・・1,000万円 左記以外の住宅の場合・・・ 500万円
(注)東日本大震災により、住宅用家屋が滅失等した者についての非課税限度額は、 省エネルギー性・耐震性を備えた良質な住宅の場合は1,500万円、それ以外の住宅の場合は1,000万円となります。
(2) 適用対象となる住宅用家屋の床面積は、東日本大震災の被災者を除き、240平方メートル以下とされます。
3、不動産取得税
(1) 宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置の適用期限が3年延長されます。
(2) 住宅および土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が3年延長されます。
4、相続税の連帯納付義務
申告期限等から5年を経過した場合等について、連帯納付義務が解除されます。
【法人課税】
1、中小企業投資促進税制
対象資産の範囲を拡大した上で、適用期限が2年延長されます。
2、少額減価償却資産の特例
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(30万円未満)については、適用期限が2年延長されます。
【消費課税】
《車体課税》
環境性能に優れた自動車(エコカー)を対象に以下の軽減措置等が行われます。
(1) 自動車重量税が軽減されます。
(2) 電気自動車等の低公害車に対して、自動車取得税が軽減されます。
(3) 環境負荷の小さい自動車については、自動車税が軽減されます。
【国際課税】
《国外財産調書制度の創設》
その年の12月31日において、価額の合計額が5,000万円を超える国外に所在する財産(国外財産)を有する居住者は、その財産の種類、数量および価額その他必要な事項を記載した調書(国外財産調書)を翌年3月15日までに、税務署長に提出することになります。