平成23年度税制改正(案)の主な改正項目を整理してみました。
〈タイムスケジュール〉
平成23年1月
・所得税の年少扶養控除の廃止 <増税>
・所得税の特定扶養控除の縮小 <増税>
・贈与税の税率構造の見直し <どちらともいえない>
平成23年4月
・法人税率の引下げ <減税>
・減価償却における定率法の見直し <増税>
・貸倒引当金制度の見直し(大法人のみ) <増税>
・欠損金の繰越控除制度の見直し(大法人のみ) <増税>
・欠損金の繰越期間の延長 <減税>
・相続税の未成年者・障害者控除引上げ <減税>
・相続税の基礎控除の引下げ <増税>
・更正の請求と増額更正できる期間の延長 <どちらともいえない>
・雇用促進税制の創設 <減税>
平成24年1月
・給与所得控除の上限設定 <増税>
・役員給与に係る給与所得控除の見直し <増税>
・特定支出控除の見直し <減税>
・役員退職給与の課税制度の見直し <増税>
・成年扶養控除の見直し <増税>
平成24年4月
・仕入税額控除制度の95%ルールの見直し <増税>
平成24年10月
・消費税の事業者免税点制度の見直し <増税>
【法人課税】
1 法人税率の引下げ
法人税の税率が次の表のとおり引き下げられます。
2 減価償却における定率法の償却率の見直し
平成23年4月1日以後に取得する減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率を2倍(現行2.5倍)した数とされます。
3 欠損金の繰越控除制度
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度および青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額の80%相当額とします。
なお、中小法人等については、現行の控除限度額となります。
4 欠損金の繰越期間
繰越期間が9年(現行7年)に延長されます。
5 貸倒引当金
適用法人が銀行、保険会社その他これらに類する法人および中小法人等に限定されます。
6 寄附金の損金算入限度額
資本金等の額の千分の2.5相当額と所得の金額の百分の2.5相当額との合計額の4分の1(現行2分の1)とされます。
【個人所得課税】
1 給与所得控除の上限設定
その年中の給与等の収入金額が、1,500万円を超える場合の給与所得控除額については245万円を上限とします。
2 役員給与等に係る給与所得控除の見直し
給与収入4,000万円超の法人役員等の給与に係る給与所得控除については、控除上限額の2分の1の額(125万円)を上限とします。
2,000万円から4,000万円までの間は、控除額の上限を4分の3とする部分も含め徐々に控除額が縮減されます。
3 特定支出控除の見直し
特定支出の範囲の拡大、特定支出控除の適用判定の基準の見直しがされます。
4 役員退職金の見直し
勤続年数5年以下の法人役員の退職金について、2分の1課税が廃止されます。
5 成年扶養控除の見直し
障害者、65歳以上の高齢者、学生等については、引き続き扶養控除の対象とし、また、合計所得400万円(給与収入568万円)以下の納税者については従来どおりの適用とします。
6 上場株式等の軽減税率延長
上場株式等の配当・譲渡所得等に係る10%軽減税率は、景気に配慮し適用期限が2年延長されます。
これに合わせ、平成24年1月から適用予定だった少額上場株式等に係る配当・譲渡所得等の非課税措置の開始は26年1月からとなります。
【資産課税】
1 相続税の基礎控除の見直し
地価動向に対応して、基礎控除が、「3,000万円+600万円×法定相続人数」に引き下げられます。
また、相続税の税率構造が見直されます。
2 死亡保険金に係る非課税枠
「500万円×法定相続人(未成年者、障害者または相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限ります)数」とされます。
3 未成年者・障害者控除
1年当たり控除額が10万円に引き上げられます。
4 贈与税率の見直し
若年世代への早期資産移転を進める観点から、暦年課税について、直系卑属(20歳以上)を受贈者とする贈与税の税率構造が緩和されます。
5 相続時精算課税制度の見直し
受贈者に20歳以上の孫を追加するとともに、贈与者の年齢要件が60歳以上に引き下げられます。
【消費課税】
1 事業者免税点制度の見直し
個人事業者のその年または法人のその事業年度につき、現行制度で事業者免税点制度の適用を受ける事業者のうち、次に掲げる課税売上高が1,000万円を超える事業者については、事業者免税点制度を適用しません。
(1) 個人事業者のその年の前年1月1日~6月30日までの間の課税売上高
(2) 法人のその事業年度の前事業年度開始の日から6か月間の課税売上高
2 仕入税額控除制度の95%ルールの見直し
課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除できるいわゆる95%ルールについては、その課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者に限り適用することとなります。