平成19年度の独占禁止法違反事件

公正取引委員会が5月21日、平成19年度における独占禁止法違反事件の処理状況を公表しました。
これによると、公取委が独占禁止法違反行為について法的措置(排除措置命令と課徴金納付命令)を採った数は、延べ193名の事業者に対し、24件でした。件数は平成15年以降、25件、35件、19件、13件、24件と推移しています。
24件の内訳は、入札談合14件、価格カルテル6件、不公正な取引方法3件、事業者団体による構成事業者への不当な制限の1件です。

入札談合14件のうち、9件が公共入札(防衛施設庁発注の土木・建築工事、名古屋市発注の地下鉄延伸土木工事、独立行政法人緑資源機構の林道調査測量業務など)に係る談合、1件が国際カルテル事件(日本・欧米の事業者によるマリンホース受注調整に係るもの)、4件が民間の発注工事(ガス事業者等が指名競争入札に付する天然ガスエコ・ステーション建設工事、東京ガスが指名競争入札により発注する高圧ガス導管工事など)にかかる談合でした。これらに対して排除措置命令・課徴金納付命令が出されました。
うち、緑資源機構の事件については、4法人と、受注業務に従事していた5名、同機構の元理事1名、元課長1名が刑事告発されました。刑事告発はこれのみです。東京地裁は平成19年11月1日、4法人に対し最高9000万円、総額2億7000万円の罰金刑、7名に最長2年の懲役刑(執行猶予付き)の有罪判決を出しました。

価格カルテルとしては、内装工事用ケイ酸カルシウム板の製造販売業者が価格引き上げの合意をした事件、ガス用ポリエチレン管の製造販売業者が価格引き上げの合意をした事件など6件について排除措置命令または課徴金納付命令が出されました。

不公正な取引方法に関する排除措置命令が出されたのが不当廉売に関する2件と、共同の取引拒絶に関する1件でした。
不当廉売に関する2件はいずれもガソリンスタンドが仕入価格を下回る価格で継続的に販売した事例であり、共同の取引拒絶に関する1件は、新潟のタクシー事業者21社が共同して、「共通乗車券事業者」を介して、低額な運賃等を設定していたタクシー事業者とは共通乗車券契約を締結させないようにした事例です。なお、酒類、石油製品、家庭用電気製品などの小売業者に対して、「不当廉売につながるおそれがある」として1679件の「注意」が公取委から出されています。
また、公共調達に関するダンピング受注に関して、公共工事の低価格入札について、5件の警告が出されています。

事業者団体による構成事業者への不当な制限としては、社団法人滋賀県薬剤師会が、会員が経営または勤務している医薬品販売業者に対して、新聞折り込み広告に一般用医薬品の販売価格を表示しないようにさせた事件につき排除措置命令が出されています。

課徴金減免制度に基づき、事業者から自主申告のあった件数は74件でした。