帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置
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令和4年度税制改正により、記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の適正な履行を担保し、帳簿の不保存や記載不備を未然に抑止するため、過少申告加算税・無申告加算税の加重措置が講じられました。

 

1.概要

記帳義務の適正な履行を担保するため、申告所得税、法人税・地方法人税、消費税の税務調査において、税務職員から「売上げ(業務に係る収入を含む。)に関する調査に必要な帳簿」の提示等を求められ、かつ、次のいずれかに該当する場合には、帳簿に本来記載等をすべき事項に関する申告漏れ等に対して課される通常の過少申告加算税・無申告加算税(以下(1)〜(3)において「過少申告加算税等」といいます。)の割合が10%又は5%加重されることとなりました。

(1)帳簿の提示等をしなかった場合

過少申告加算税等の割合が10%加重されます。

(2)帳簿への売上金額の記載等が、本来記載等をすべき金額の2分の1未満だった場合

過少申告加算税等の割合が10%加重されます。

(3)帳簿への売上金額の記載等が、本来記載等をすべき金額の3分の2未満だった場合((2)に該当する場合を除く。)

過少申告加算税等の割合が5%加重されます。

したがって、例えば、個人事業者に対する税務調査において提示等がされた帳簿について、本来記載等をすべき売上金額が2,000万円であったにもかかわらず、実際には800万円しか記載等がされておらず、その結果、申告漏れが生じていた場合には、上記(2)(本来記載等をすべき金額の2分の1未満だった場合)に該当することから、申告漏れとなっていた1,200万円に対して新たに納める必要のある所得税額を基礎として課される過少申告加算税の割合が10%加重されることとなります。

 

2.適用開始時期

(1)申告所得税

令和5年分から適用

(2)法人税・地方法人税

令和5年10月決算期分

(3)消費税

申告所得税、法人税・地方法人税と同様(課税期間の特例を適用している場合には、令和5年10月以降に課税期間が終了するものから適用)

 

3.補足

(1)本措置の対象となる帳簿

本措置の対象となる「売上げ(業務に係る収入を含みます。)に関する調査に必要な帳簿」とは、所得税法、法人税法及び消費税法に基づき事業者が備付け及び保存しなければならない帳簿のうち、青色申告における仕訳帳・総勘定元帳、白色申告における売上帳等(売上げ(業務に係る収入を含みます。)が確認できる帳簿)をいいます。

(2)個人事業主の対象所得

帳簿の備付け・保存義務がある所得を生ずべき業務を行う事業者が、所得税について本措置が適用されるため、事業所得、不動産所得、山林所得が対象となります。

(3)災害等が合った場合

災害等により帳簿の提示等をすることができなかった等、納税者の責めに帰すべき事由がない場合には、本措置に基づく加算税の加重は適用されないこととされています。

「災害」とは、震災、風水害、雪害、凍害、落雷、雪崩、がけ崩れ、地滑り、火山の噴火等の天災又は火災その他の人為的災害で自己の責任によらないものに基因する災害をいいます。また、「やむを得ない事情」とは、帳簿作成のために使用しているシステムに障害が発生した場合などの災害に準ずるような状況や病気による入院をしたこと等をいいます。

 

1年間に生じた所得や課税期間における課税標準を正しく計算して申告するためには、日々の取引の状況を記帳し、帳簿や書類を一定期間保存する必要があります。記帳に当たっては、会計ソフトを利用することにより、日々の取引内容を入力するだけで、複式簿記による帳簿でも簡単に記帳することができるため、そのような対応が好ましいといえます。