<ポイント>
◆定期借地契約でも借主側の中途解約権を定めることは可能
◆中途解約が可能になる時期や違約金の定め方について検討が必要
更新を想定せず借地期間満了とともに契約が終了する借地契約を定期借地契約といいます。定期借地契約には一般定期借地、事業用定期借地、建物譲渡特約付き借地の3類型があります。
いずれも借地期間満了後に契約を継続させないようにする点に主眼をおいて導入された制度であるため、制度導入時には借地期間の途中での解約はあまり想定されていませんでした。
しかし、制度導入から20年余りが経って経済情勢も変化し、事業の縮小・廃止、他の物件への移転などの事情から借地人側が期間途中で借地契約を解約したいと考えるケースもでてきています。
上記のとおり、以前は定期借地契約の中途解約という論点はあまり意識されてこなかったため、出回っている定期借地契約書の様式には中途解約条項がおかれていないことがほとんどです。
期間を定めた契約である以上、中途解約条項がおかれていない場合には借主も貸主も一方的に定期借地権を中途解約することはできません。
どうしても中途解約しないといけない場合には合意解約を検討することとなります。中途解約を希望する側から違約金を支払う必要がでてくるでしょう。
これから借地契約を締結するという場面であれば、特に借主側としては、そもそも定期借地契約とすることが適切なのかを考えてみてください。定期借地契約は主として貸主側の都合を考えて制度設計されています。
借主側の利点として、観念的には、期間満了後の更新がないことで賃料を安く抑えることができるという考え方がありえます。しかし実際には賃料は物件に対する需要など複数の要因で左右されるものであり、定期借地だからといって賃料を安くできるとは必ずしも言いきれません。
貸主側の希望により定期借地契約によらざるをえない場合には、借主側としては中途解約条項を定めておくことを検討してみてください。
借地期間は、一般定期借地であれば50年以上、事業用定期借地では10年以上30年未満(内容により30年以上50年未満)といった年数です。長期にわたる借地期間のなかで当初考えていなかった事情が生じて中途解約が必要になることもありえます。
借主側から中途解約条項を入れるように求めた場合、「中途解約できるのでは定期借地の意味がなくなる」などと言って貸主が難色を示すことも想定されます。
しかし、借主側から中途解約できるとしても、一定時期までに借地関係を終了させられること、建物買取請求をされずに済むことといった、定期借地による貸主側のメリットがすべてなくなってしまうわけではありません。
借地期間満了までの賃料収入に対する貸主側の期待には配慮が必要ですが、この点は、契約開始から一定年数経った後でなければ中途解約できないという制限をつけたり、中途解約には違約金支払いを要するなどとすることによって調整の余地があります。
こうした観点から貸主側と交渉してみてください。
なお、今回は借主側からの中途解約について説明しましたが、借地借家法は借主に不利な特約を制限しており、定期借地契約において貸主側の中途解約権を定めることは無効とされます。