<ポイント>
◆委任と請負の最大の違いは完成義務の有無とされる
◆しかし法的性質を論じることが解決につながることは多くない
◆業務内容・仕様、検収、代金支払いの具体的条項こそが重要
契約の性質として請負なのか?委任なのか?ということが議論されることがあります。
これから契約をしようという交渉の場面のほか、裁判のなかで弁護士・裁判官がこうした議論をすることもあります。
かつては建築物の設計監理契約についてこうした法的性質の議論がありました。
また、システム開発をめぐって請負、準委任のいずれかといった議論がなされることがあります。
請負契約では受注者に完成義務があるとされるのに対して、委任契約では受注者は仕事の遂行を引き受けるが完成義務を負わないとされています。この完成義務の有無が委任、請負の最大の違いです。
ここから、委任であれば予定された作業工程を終えることで受注者は代金請求できるのに対して、請負であれば成果物が完成していないと代金請求できない、というようなことがいわれています。
そのような違いがあるので委任か請負かをはっきりさせておくべきだ、というのが法的性質論を重視する立場の言い分のようです。
しかし、よくよく考えてみると法的性質を論じることが意味をもつケースはさほど多くありません。
完成義務の有無が問題であるならば、法的性質論を介さずに端的に完成義務の有無それ自体を考えるべきです。
請負か委任かという契約の法的性質を判断しようとする場合、「契約当事者が成果物の完成を意図しているかどうか」が区別の分かれ目になります。つまり、契約の法的性質を判断するために完成義務の有無を考えないといけないということになります。
その結果、以下のような思考をたどることになります。
完成義務あり
↓
よって請負である
↓
よって完成義務あり
これは明らかにトートロジーです。法的性質を論じる意味はなく直接に完成義務だけを議論すればよいことになります。
やや極端な表現をしましたが、委任か請負かという抽象的な性質論は実際の問題解決には余り役立ちません。
具体的な契約条項として業務内容・仕様、検収や代金支払いの条件について考えていくことが大事です。