地代の増減額について
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<ポイント>
◆減額しないとの特約があっても減額を求めることができる
◆減額を求められても裁判確定までは従前の額の支払を受けられる

経済の回復の見込が立たず、借地人から地代の減額を求められている土地所有者の方、または、長期間にわたって地代が一定だったので増額したいと考えている土地所有者の方もいるかと思います。
借地借家法によると、事情の変化により地代が不相当に低く、または高くなった場合には、地代の増減を求めることができるとされています。
事情が変化した場合としては、借地借家法上、(1)土地に対する租税・公課が増減した場合、(2)土地の価格が上昇・低下するなど、経済事情が変動した場合、(3)近傍類似の土地の地代と比較して低い、または高い場合が挙げられています。
最近は、いわゆる契約書の雛形が出回っていることもあり、契約書にも上記内容と同じ、または似たような条項が盛り込まれていることがよく見受けられます。

それでは、事情が変化すれば、一定期間地代を増額しない旨の特約を結んでいても、土地所有者は借地人に対して地代の増額を求めることができるのでしょうか。または、事情が変化すれば、一定期間地代を減額しない旨の特約を結んでいても、借地人は土地所有者に対して地代の減額を請求することができるのでしょうか。
この点については、借地借家法に、「一定の期間地代等を『増額』しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」(二重カッコは筆者)と規定されています。すなわち、一定の期間地代を「増額」しないとの特約を結んでいるならば、事情の変化により地代が不相当に「低く」なったとしても、その期間中は、土地所有者は借地人に対し、基本的には、「増額」を求めることができなくなります。
他方で、一定の期間地代を「減額」しないとの特約を結んだ場合については規定がないことから、事情の変化により地代が不相当に「高く」なった場合には、借地人は土地所有者に対し、地代の「減額」を求めることができるとされています。

次に、地代の増減を求める際の注意点について説明します。
土地所有者が借地人に対して地代の増額を求めたとしても、増額を正当とする裁判が確定するまでは、借地人は土地所有者に対し、自らが妥当と考える地代(ただし従来の地代以上の額)を支払えばよく、土地所有者としては、賃料の一部の不払いを理由に解除することはできません。
もっとも、裁判が確定した場合において、既に支払いを受けた額に不足があるときは、土地所有者は借地人に対し、その不足額に年1割の利息を上乗せした金額を支払うよう請求できます。

土地所有者が、借地人から地代の減額を求められたとしても、減額を正当とする裁判が確定するまでは、土地所有者は、自らが妥当と考える地代(ただし従来の地代以下の額)の支払いを求めることができます。借地人が、土地所有者が妥当と考える地代を下回る金額しか支払ってこなかった場合は、賃料の一部の不払いにより解除することができます。
もっとも、減額を正当とする裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代の額を超えるときは、土地所有者は借地人に対し、その超過額に年1割の割合の利息を付けて借主に返還しなければなりません。
ご参考になれば幸いです。