【司法制度改革推進本部の方針】
新聞報道によると、司法制度改革推進本部は、国際商取引などの紛争解決手段である仲裁手続きを定めた仲裁法を制定する方針を決めました。
【仲裁とは】
仲裁とは、紛争当事者の合意により仲裁人を定めて、その仲裁人の判断に紛争解決を委ねようという手続きであり、一般に、裁判に比べて迅速であるとか、専門性の高い事案に適切に対応できる等の長所が指摘されています。
また、欧米での裁判では陪審員の判断が予想しにくいのに対して、仲裁裁判所はより予想しやすいという長所を指摘する人もいます。
【これまでの仲裁制度の概要】
日本における仲裁に関する法律等としては、「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(昭和36年)、「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」(平成8年)があります。
「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」では、国際取引きに関して、条約締約国でなされた仲裁判断は日本においても有効であり、その逆も同様であるという制度になっており、そのための機関として日本には国際商事仲裁協会があります。
これは、昭和25年に、日本商工会議所を中心に経済団体連合会など経済7団体が発起人になって、日本商工会議所に国際商事仲裁委員会が設置され、その後、国際取引の発展に伴って、事業の拡大と業務の充実のため昭和28年に同会議所から独立して、社団法人国際商事仲裁協会となったものです。
これに相当する機関として、アメリカにはアメリカ仲裁協会(American
Arbitration Association)、イギリスにはロンドン国際仲裁裁判所(London
Court of International Arbitration)があります。
「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」については、旧民事訴訟法(明治23年)の785条から806条(仲裁手続きの規定)の規定が、同法の改正によって別の法律となったものです。
ただし、その内容には変更はなかったため、明治23年の規定がそのまま生き続けることになっていました。
国際商事仲裁協会では、これらの仲裁手続きに関する法律、条約を踏まえながら、同協会に制定した規則による仲裁手続きがなされることになっていますが、今回、仲裁手続きに関する法律を抜本的に改正しようという政府の方針が打ち出されたのです。
【国連国際商取引法委員会の模範法を参考に】
今回の新仲裁法の制定法については、国際仲裁手続きに関して、国連の国際商取引法委員会(UNCITRAL)が1985年に採択した模範法があり、これを参考にするということです。
すでにドイツを始め諸外国やアメリカの州では、これを基礎に仲裁法が制定されています。
【運用の見通し】
この新仲裁法により一般の紛争解決にどの程度役立つかということですが、国際仲裁手続きについては、一般的に、仲裁人に支払う報酬が高額になる場合がある、一審のみの判断であり判断の妥当性について信用できない場合がある等の短所が指摘されることもあり、今後の運用の仕方が注目されることになります。