同一労働同一賃金(1)法改正について
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<ポイント>
◆同一の労働に対しては同一の待遇が必要
◆「均衡待遇」と「均等待遇」の定めあり
◆中小企業については2021年4月から施行

2020年10月13日と15日に同一労働同一賃金についての最高裁判決がありました。
改正前の法解釈を行った判決ではありますが、いわゆる正規労働者と非正規労働者の待遇差がどこまで許されるかが争点となった判決です。日本の労働者の中で、非正規雇用の占める割合が4割近くとなっていることもあり、社会的影響が非常に大きな判決であるといえます。
その判例を解説する前に、今回は2018年に改正された同一労働同一賃金の内容について説明したいと思います。

同一労働同一賃金とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差があってはならないとする考え方です。
一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようになることが期待されています。

従前は正規雇用労働者(正社員)と短時間労働者との待遇差についてはパートタイム労働法8条・9条、正規雇用労働者と有期雇用労働者との待遇差については労働契約法20条、と別々に規定されていましたが、2018年の法改正で、労働契約法20条が削除され、パートタイム労働法(「短時間・有期雇用労働者雇用管理改善法」いわゆるパートタイム労働法)に有期雇用労働者に関する規律も統合されることとなりました。
施行日は、大企業については2020年4月1日から、中小企業については2021年4月1日からです。
なお、改正労働者派遣法は2020年4月1日からの施行です。

同一労働同一賃金に関する改正パートタイム労働法の定めは、具体的には「均衡待遇」(労働法8条)と「均等待遇」(同法9条)あります。この改正により有期雇用労働者にも均等待遇条項が適用されることになりました。

また、改正法の施行に先立ち同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示)が定められ、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを具体的に示しています。

では同一賃金同一労働の内容である均衡待遇・均等待遇とはどのようなものでしょうか。

均衡待遇とは
「(1)職務内容、(2)職務内容・配置の変更範囲、(3)その他の事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止する、つまりバランスのとれた待遇にしなければならないということです。
逆に言えば、条件の違いに応じた不合理のない待遇差については認めているといえます。

そして、均等待遇とは
「(1)職務内容、(2)職務内容・配置の変更範囲」が同じ場合に差別的取り扱いを禁止することです。
つまり、条件が同じであれば、待遇を同じにすることを求めるものです。

また、(1)職務内容、(2)職務内容・配置の変更範囲、(3)その他の事情は、以下のとおりです。

(1)職務内容とは、(a)業務の内容と、(b)業務に伴う責任の程度に分かれます。
(a)業務の内容は、職業上、継続して行う仕事のことを言います。業務が同じかどうかは、業務の種類(職種・販売職・事務職・製造工・印刷工など)と個々の業務の中の中核的業務で判断します。
(b)業務に伴う責任の程度は、業務に伴って与えられている権限の範囲をいいます。具体的には、単独で契約締結可能な金額の範囲・管理する部下の人数・決裁権限の範囲・業務の生活について求められる役割・ノルマ等への成果への期待度・トラブル発生時や緊急時に求められる対応などのことです。

(2)職務内容・配置の変更範囲とは、転勤昇進といった人事異動や役割の変化の有無や範囲など、人事活用の仕組みや運用のことをいいます。

(3)その他の事情とは職務の成果や能力・経験・合理的な労使慣行・労使交渉の経緯などをいいます。

法改正前は、労働契約法旧20条によって、有期労働契約者について、前記の「均衡待遇」が定められていました。今般の各最高裁判決はこの「均衡待遇」についての判断が注目されました。

*中小企業の定義は中小企業基本法によります。

製造業その他
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が
300人以下の会社及び個人

卸売業
資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が
100人以下の会社及び個人

小売業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が
50人以下の会社及び個人

サービス業
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が
100人以下の会社及び個人