区分所有マンションの復旧
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<ポイント>
◆復旧手続は滅失の程度が大規模か小規模かで異なる
◆大規模一部滅失の復旧決議後、決議に賛成しなかった者は買取請求できる
◆大規模一部滅失後に復旧決議も建替え決議もなされないとき、買取請求できる

今回は、区分所有マンションの復旧についてお話します。
区分所有法では、建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失したとき(小規模一部滅失)と、建物の価格の1/2を超える部分が滅失したとき(大規模一部滅失)に分けて、復旧手続が定められています。
当時の日本不動産鑑定協会カウンセラー部会が作成した判定マニュアルによると、「復旧に必要な補修費用見積額」が「建物の再調達価格から経年減価を差し引いた額」の1/2以下であれば小規模一部滅失、1/2を超えるのであれば大規模一部滅失とされています。

小規模一部滅失のとき、区分所有法上、各区分所有者は、滅失した共用部分を単独で復旧できます。ただし、復旧工事に着手するまでに、集会で復旧決議や建替え決議があったときは、その決議に従うべきであり、単独で復旧できません。
なお、規約で別段の定めをすることもでき、たとえば、「小規模一部滅失を復旧するためには集会の決議が必要」とすることもできます。

大規模一部滅失のとき、区分所有法上、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の集会決議をすることができます。区分所有者は、単独で共用部分を復旧することができません。
また、大規模一部滅失の復旧決議がなされたとき、その集会の議事録には、各区分所有者の賛否を記載または記録しなければなりません。なぜなら、後述するとおり、決議に賛成しなかった区分所有者は、決議に賛成した区分所有者等に対し、建物およびその敷地に関する権利を買い取るよう請求できるので、誰が決議に賛成したのかを明らかにしておく必要があるからです。

大規模一部滅失の復旧決議がなされた日から2週間経過後、決議に賛成しなかった区分所有者は決議賛成者に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買い取るよう求めることができます。決議に賛成しなかった者が、復旧費用の負担を免れるようにするためです。
ただし、大規模一部滅失の復旧決議がなされた日から2週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により建物およびその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、その指定された者(買取指定者)がその旨を、決議に賛成しなかった者に書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してしか買取を求めることができません。
ここでいう買取指定者は、復旧決議に賛成した区分所有者はもちろん、区分所有者以外の者(たとえばディベロッパー)であってもかまいません。

大規模一部滅失の復旧決議をおこなうための集会を招集した者(買取指定者の指定がされたときは買取指定者)は、決議に賛成しなかった区分所有者に対し、4か月以上の期間を定めて、買取を求めるか否かを確答するよう書面で催告できます。
催告を受けた区分所有者は、定められた期間を経過した後は、買取を求めることができなくなります。
このような制度を設けた理由は、復旧決議後いつまででも買取を求めることができるとすると、復旧費用を最終的に誰が負担するのかなどが決まらず、復旧の円滑な実現の妨げになるからです。

大規模一部滅失の日から6か月以内に、復旧決議や建替え決議のための集会が開かれなかったとき、または開かれたけれども復旧または建替えをする旨の決議がなされなかったときは、各区分所有者は他の区分所有者に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買い取るよう求めることができます。
復旧または建替えを望んでいる区分所有者を、復旧も建替えもなされない状況から解放するためです。

参考になれば幸いです。