区分所有マンションの建替え決議
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<ポイント>
◆建替え決議の要件は厳格化されている
◆建替え参加者は建替え非参加者に対して区分所有権等の売渡請求ができる
◆区分所有権等を売り渡した者は一定の条件のもと区分所有権等の再売渡請求ができる

今回は区分所有マンションの建替え決議についてお話しします。

区分所有法では、区分所有者の5分の4以上かつ議決権の5分の4以上の賛成により、「建替え決議」ができます。ここでいう「建替え決議」とは、建物を取り壊し、もとの敷地と少なくとも一部が重なる土地の上に、新たに建物を建てる決議をすることです。
もとの建物を取り壊すことが前提となっているので
(1)「もとの建物が全壊により全部滅失した後に、新たに建物を建てようとするとき」は、区分所有法で定められている「建替え決議」によることはできません。
新たに建物を建てることが前提となっているので
(2)「もとの建物を取り壊して更地にするだけのとき」
も、区分所有法で定められている「建替え決議」によることはできません。
民法上、(1)のときは敷地共有者全員の合意が、(2)のときは区分所有者全員の合意が必要となります。(1)(2)については、後日、被災マンション法と関連づけてお話しします。

建替え決議では、新たに建てる建物(再建建物)の設計の概要、建物の取壊しや再建建物の建築に必要な費用の概算額、その費用の分担や再建建物の区分所有権の帰属に関する事項を定めなければなりません。
また、これらの事項のほか、建替えを必要とする理由や、建替えしない場合におけるもとの建物の維持費用等を、次に述べる招集通知に盛り込まなければなりません。
そして、建替え決議のための集会を招集するには、各区分所有者に十分に検討してもらうため、集会の日より2ヶ月以上前に招集通知を発しなければなりません。また、集会の日より1か月以上前に、各区分所有者に十分に理解してもらうため、説明会を開かなければなりません。

以下、建替え決議後の手続についてお話しします(今回は、マンション建替え円滑化法については割愛させていただきます。)。
建替え決議後、集会を招集した者は、決議に賛成しなかった者に対して遅滞なく、建替えに参加するか否かを回答するよう書面で催告しなければなりません。催告を受けた者が2か月以内に回答しなかったときは、建替えに参加しない旨を回答したとみなされます。
そして、建替え決議に賛成した者や建替えに参加する旨を回答した者、またはこれら建替え参加者全員の合意により区分所有権・敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(買受指定者)は、建替えに参加するか否かの2か月の回答期間の満了の日から2か月以内に、建替えに参加しない旨を回答した者に対し、区分所有権・敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できます(売渡請求)。ただし、一定の条件のもと、建物の明渡しにつき相当の期限が与えられます。

建替え決議から2年以内に正当な理由なく建物の取壊し工事に着手しないとき、または建物の取壊し工事の着手を妨げる正当な理由がなくなった日から6か月内にその着手がなされないときは、売渡請求を受けて区分所有権・敷地利用権を売り渡した者は、一定の条件のもと、これらの権利を売り渡すよう請求(再売渡請求)できます。