<ポイント>
◆専有部分の修繕等をする場合でも理事長の承認が必要なときがある
◆近い将来建替え等が想定される場合、承認を求める者に注意喚起するのが望ましい
◆理事長等は必要な範囲で修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査をおこなえる
前回、標準管理規約(単棟型)における共用部分等の駐車場使用についてお話ししました。今回は、標準管理規約(単棟型)における専有部分の修繕等についてお話ししたいと思います。
標準管理規約では、区分所有者はその専有部分について修繕・模様替え・建物に定着する物件の取付けまたは取替え(以下「修繕等」)であって共用部分や他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを行おうとするときは、あらかじめ理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならないとされています(電磁的方法が利用可能なら電磁的方法による承認でも可)。
専有部分の修繕等のうち承認を必要とするものの具体例として、床のフローリング、ユニットバスの設置、主要構造部に直接取り付けるエアコンの設置、配管の枝管(または配線の枝線)の取付け・取替え、間取りの変更等が挙げられます。
理事長の承認についての考え方としては、標準管理規約(単棟型)コメントに添付されている別添2「区分所有者が行う工事に対する制限の考え方」が非常に参考になります。(下記「標準規約条文第1~4章まで」ご参照) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001417732.pdf
また、標準管理規約(単棟型)コメントをみると、老朽化が進む等近い将来に建替えやマンション敷地売却が想定されるマンションで、高額な費用をかけて専有部分の大規模な修繕等を行う区分所有者がいた場合、その工事から数年後に建替え等の検討が始まると、当該区分所有者にとって二重の出費ともなりかねないほか、建替え等の合意形成に支障が生ずる可能性があるので、このようなマンションでは、修繕等について理事長の承認を求めてくる区分所有者に、近い将来に建替え等が検討される可能性がある旨の注意喚起を行うことが望ましいとされています。
次に、標準管理規約における、理事長の承認に向けた具体的手続などについて説明します。
区分所有者は、設計図・仕様書・工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならず、これを受けて理事長は、その申請について理事会決議により承認・不承認を決定しなければなりません。
そして承認があったとき、区分所有者は承認の範囲内で専有部分の修繕等に係る共用部分の工事を行えます(たとえば専有部分の修繕等に伴って必要となる、配管の枝管(または配線の枝線)の取付け・取替え工事など)。
また、理事長またはその指定を受けた者は、承認するかどうかの理事会決議に必要な範囲で、または施工状況を確認する必要がある修繕等について、修繕等の箇所に立ち入り、必要な調査を行えます。区分所有者は、正当な理由がなければこれを拒否できません。
なお、標準管理規約では、理事長の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事により共用部分や他の専有部分に影響が生じたときは、当該工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならない旨定められています。
また、たとえ工事の結果による事後的な影響のおそれまではなく理事長の承認を要しない修繕等でも、工事の過程(工事業者の立入り、工事の資機材の搬入、工事の騒音、振動、臭気等工事の実施中)での共用部分または他の専有部分への影響について管理組合が事前に把握する必要があるものを行おうとするときは、あらかじめ、理事長にその旨を届け出なければならない、とされています。
さらに、理事長の承認を受けないで専有部分の修繕等の工事をおこなった場合には、 理事長は、その是正等のため必要な勧告・指示・警告を行うか、その差止め・排除・原状回復のための必要な措置等をとれます。