内部通報事務局による「内部通報案件に関する報告書」の作成
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<ポイント>
◆内部通報事務局は事実調査とその評価を終えた時点で報告書を作成する
◆記載内容は通報受理以降の職務遂行の経過及び事務局としての意見
◆報告書の提出先は事務局が所属する上部組織及び社内ルールによる関連先

事実調査が終了し、その結果に基づく事実認定及び違法性の評価等も終了すると、内部通報事務局としての仕事は山を越え、最後の作業にとりかかります。
それは次の3つです。
① 当該内部通報案件に関する報告書の作成と関係部署への提出
② 通報者に対する報告(フィードバック)
③ 事後のモニタリング

不正行為等の事後処理に当たっては、このほか、被通報者や関係者に対する処分や再発防止策の策定・実施、対外的公表や行政機関等への報告の要否判断・実行、等の重要な課題が残っています。しかし、それらは内部通報制度特有の問題ではなく、会社(組織)内において不正行為等が発生、発覚した場合に共通する問題です。従って、内部通報事務局の直接の所管ではありません。
ちなみに、会社(組織)内で発生する不正行為等のうち内部通報制度に関係するものはその一部で、多くはそれ以外の端緒によって問題が表面化します。例えば、その部署の管理職が発見した、外部機関(例えば、労基署、税務署、公取委など)から指摘を受けた、内部告発によって発覚した、事故や犯罪の発生によって発覚した、本人が自白(告白)した、等々。

今回は内部通報に関する問題のうち、上記①、内部通報事務局(以下単に「事務局」と言います)が最終的にまとめる報告書について解説します。
事務局が作成する報告書に記載する内容はおおむね以下のとおりです。

① 内部通報を受理した経過
受理した日。通報手段(メール、文書、電話、その他)。
社外窓口(弁護士)に寄せられたものは、その受理日と事務局の受理日。
匿名か顕名か、社外窓口(弁護士)の場合、「会社には匿名」の指定をしているか。
② 通報内容の概要
③ 通報者とのコンタクトの経過
コンタクトした日時、場所、担当者、立会人。
聞き取りをした内容。こちらから伝えたこと。
事実調査の前後、通報者が不利益取扱いを受けていないかについて。
なお、社内窓口への匿名通報の場合はコンタクトの方法がありません(但し、匿名のままメールによる会話ができる場合はあります)。
④ 社外窓口(弁護士)とのコンタクトの経過
社外窓口(弁護士)が受理した内部通報については同弁護士から受けた報告や意見。
事実調査の過程で同弁護士と相談したり、協力を求めた場合はその内容。
⑤ 被通報者、第三者とのコンタクトの経過
対象人物、日時、場所、コンタクトした者(事務局担当者、弁護士、立会人など)。
聞き取りした内容。こちらから伝えたこと。
対象人物の協力や守秘義務に問題はなかったか。
なお、問題部署の管理職とのコミュニケーションはとくに重要です。
⑥ 物的証拠を収集した場合はその内容。
⑦ 事実認定について
不正行為等の事実認定の内容。通報と食い違いがあったときはその内容、事情。
事実認定が困難であった場合はその旨及び理由(例えば、被通報者が事実を否認している、通報自体が虚偽、誇張であった、等)。
⑧ 違法性の評価について
被通報者等の行為についてどのような違法性、不当性の評価を下したか。
それが被通報者等の見解と相違した場合はその旨及び内容。
弁護士等の意見を聞いた場合はその旨及び内容。
違法性、不当性等について評価が困難であった場合はその旨及び理由。
⑨ 事務局としての意見
関係者の処分や再発防止策に関する事務局としての意見。
会社が被った損害の内容や程度、社会的影響等に関する事務局としての意見。

報告書の提出先としては、
内部通報事務局が所属する上部組織、例えば、コンプライアンス推進部、コンプライアンス委員会、内部監査室など。
その他、社内ルールないし慣例によって定められている関連部署。例えば、人事部、賞罰委員会、監査役など。