ある企業が他の企業を買収する、あるいはMBOにより経営陣が企業を買収するといったニュースで「公開買付」(TOB)という用語をよく耳にします。
公開買付というのは、不特定多数の者に対して公告により呼びかけて有価証券市場外で株式などを買い集めることです。金融商品取引法上、有価証券報告書提出会社の株式を買い集める一定の場合(いわゆる「3分の1ルール」など)には公開買付によることが強制されます。
この公開買付ですが、買付期間や値段設定などの条件を公告し(公開買付開始公告)、こうした条件を記載した届出書(公開買付届出書)を財務局に提出するところからスタートします。
買付を行う期間は、公開買付開始公告を行って買付開始した日も含め20営業日以上60営業日以内の範囲で、公開買付の実施者が決めるものとされています。MBOの一環として公開買付を行う事例では買付の期間を30営業日と定める事例が多いです。
日数のカウントは営業日ベースです。「30営業日」であれば、実際の日数では1か月半くらいになります。
さて、こうした公開買付の期間について厄介なのが、買付期間を延長しなければいけないケースがあることです。公開買付の開始時に財務局に提出した公開買付届出書の内容に間違いがあったり不充分なところがあった場合や、公開買付届出書の提出以前に発生していた事実が提出後に明らかになった場合には「訂正届出書」を提出しなければいけません。
そして、訂正届出書を提出した場合、当初予定していた買付期間最終日がすぎても、訂正届出書の提出日を含め10営業日が経過する日までは公開買付期間を終了できず、買付期間を延長しなければいけません。
公開買付を行う側としては、買収が成功するかぎり一連の手続をできるだけ早く完了したいと考えるのが通常です。このため、なるべく公開買付期間の延長をしないで済むように全体のスケジュールを調整します。
少しややこしくなりますが、訂正届出書を提出しても必ず公開買付期間の延長が必要になるとは限りません。つまり、当初予定していた買付期間最終日よりも「訂正届出書提出日を含め10営業日が経過する日」が先にくれば、訂正届出書を提出しても買付期間の延長は不要になります。買付期間中の早めのタイミングで訂正届出書を提出するのであれば、買付期間延長をしなくてよいことになります。
公開買付期間の設定に関して特に問題なのが、公開買付で買収しようとしている企業が公開買付期間内に決算発表を行う場合です。上場企業は3か月ごとに決算情報を公表しており、スケジュール調整は微妙な問題です。
スキーム検討段階では、想定している公開買付期間内に訂正届出書の提出が必要になるかどうか、訂正届出書提出が必要としても公開買付期間の延長まで必要かどうかなどをふまえてスケジュール調整していくことになります。