債権法改正について(定型約款その2)
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<ポイント>
◆個別条項についてのみなし合意は一定の場合には除外される
◆定型約款は一定の場合に相手方の同意なく変更できる
◆定款約款の規定は改正民法の施行日前に締結された契約にも適用する

2020年4月1日に施行される民法改正(いわゆる債権法改正)について説明します。今回取り上げるのは、前稿に引き続き約款に関する改正です。

1 みなし合意除外規定
前回解説したとおり、定型取引を行うことの合意をした者は、一定の場合には定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなされます。しかし、ある個別の条項が、一方当事者に不合理な不利益を与える場合、その条項についてまで合意をしたとみなすことには問題があります。
そこで、定型約款の個別の条項が、定型約款を準備した者(定型約款準備者)の相手方の権利を制限し、又は義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして信義誠実の原則(民法1条2項)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなされます。合意をしなかったものとみなされた個別条項については、法的効力が否定されます。
この信義誠実の原則とは、社会の一員として互いに相手の信頼を裏切らないように誠意をもって行動することを要求するルールを意味します。したがって、信義誠実の原則に反して相手方の利益を一方的に害しているかは、あらゆる事情を総合的に考慮して判断しなければなりませんが、個別条項の効力を認めることで相手方が受ける不利益とその効力を否定することで定型約款準備者が受ける不利益とを比較することが重要になります。

2 定型約款の変更
契約の一般的な原則からすると、既に成立した契約を相手方の同意なく一方的に変更することはできません。しかし、定型約款については、時間の経過により状況が変化して定型約款を変更することが合理的であるにもかかわらず、相手方が多数であるため個別の同意を得ることが事実上不可能な場合が多いです。そこで、次の(1)または(2)のいずれかに該当する場合には、個別に相手方の同意を得ることなく定型約款の変更をすることで、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなして契約の内容を変更することができるという規定が設けられました。
(1)定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
(2)定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更にかかる事情に照らして合理的なものであるとき
この規定によって定型約款を変更するにあたっては、その効力発生時期を定め、かつ、約款変更する旨及び変更後の定型約款の内容とその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければなりません。

3 経過措置
以上の定型約款に関する規定は、原則として民法改正の施行日(2020年4月1日)前に締結された定型取引にかかる契約についても適用されます。ただし、改正前民法の規定によって生じた効力は妨げられません。