<ポイント>
◆契約後も借地上建物の構造・規模等の条件を変更できる場合がある
◆借地権者は承諾料の支払いを命じられることがある
国土交通省は「東日本大震災の津波被災現況調査結果(第2次報告)」として昨年10月4日、「鉄筋コンクリート造等の3階建以上の建物は、1階建・2階建と比べ『全壊(流出)』または『全壊』の割合が低かった(浸水の深さ3m以下の場合、その割合は10%を下回る)」との調査結果を発表しました。
http://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000056.html
震災の経験を踏まえ、事業継続計画(BCP)策定の必要性が認識されるにいたっています。社屋の耐震補強などもその関連で説明されています。
社屋が自社所有地に建っているならば、建替えについて行政上の規制以外に制限はありません。しかし敷地が賃借地ならば、通常は、建物の種類・構造・規模について借地契約上の制限があります。例えば鉄骨造2階建てから鉄筋コンクリート造3階建てへの建替えは、借地契約に従えばできないということがありえます。
この点に関連して借地借家法には「借地条件の変更・増改築の許可」に関する条文があります。契約時から「事情の変更」があったため、仮に現時点での契約ならば元々の借地条件とは異なった条件を定める方が合理的だという場合、当事者はその条件変更を求めて裁判所に申立てをすることができます(当事者間での協議が先行してなされ、整わなかったことが前提です)。増改築の制限がある場合もほぼ同じです。
ここでいう「事情の変更」には次のような場合が挙げられます。都市計画法上の用途地域変更に伴い建ぺい率・容積率が緩和され、より大規模な建物を建てることができるようになった場合、あるいは、近くに道路や鉄道が敷設されたため騒音・振動を防ぐ構造にする必要が生じた場合などです。
これらと比較してみれば、津波による損壊を防ぐ構造の建物にすることもまた、騒音・振動を防ぐのと同様に重要でしょう。特に津波による災害が想定される地域では、「3・11」以前と比べれば、先ほどの例でいう、鉄骨造2階建から鉄骨コンクリート造3階建てへの建替えは認められやすくなったのではないかと考えます。
なお建替えを裁判所が許可するにあたり、借地権者から土地所有者に承諾料(更地価格の一定割合など)を支払うよう命じることがあります。鉄骨造2階建てを鉄筋コンクリート造3階建てに建て替えれば、将来期間満了で借地契約が終了する際、借地権者は建物をより高い金額で土地所有者に買取り請求できることになり、翻って土地所有者は不利益を被ることになります。その不利益を予め補填する必要があるからです。
以上、災害に強い建物への建替えに際し、借地契約上の条件が制約となる場合の対処法についてご説明しました。