<1.地主が交代したら>
(質問)
私は地主から土地を借り、その土地上に家を建てて、そこに住んでいますが、この度、底地が売買されて地主が交替しました。このような場合でも、私は、その家に住み続けることは出来ますか。
(回答)
あなたが地主から土地を借りるに際して、建物所有目的で土地を借りることを約束しており、あなたがご自分の家についてあなた名義で登記をしていれば、あなたは新しい地主に借地権を主張することが出来ますので、家に住み続けることが出来ます。
地代(賃料)は、新しい地主と改めて契約しない場合であっても、それまで払っていた地代を払い続けることが出来ます。
<2.借地権の種類>
(質問)
私は、この度、地主から土地を借り、その土地上に家を建てて、そこに住むことになりましたが、借地権にはいろいろな種類があるように聞いたことがあります。どのような種類がありますか。
(回答)
借地契約の期間が満了した場合であっても当然に更新されるというのが「普通借地権」です。地主側で更新を拒絶するには、地主側がその土地を必要としている事情があるなど「正当事由」が必要になってきます。他方、契約期間(但し50年以上)が過ぎれば更新されない、というのが「定期借地権」です。
専ら事業用建物を建てることが目的の場合には、期間を10年以上20年以下として、「事業用借地権」を設定することもできます。この場合も当然更新はされません。
特殊なものとして、借地権設定後30年以上経過した日に土地上の建物を地主に譲渡することを予め約束しておくこともできます(「建物譲渡特約付借地権」)。
その他、プレハブなどの臨時設備を設置するなどの場合は「一時使用目的の借地権」と言って、この場合も約束の期間が過ぎれば更新されることはありません。
質問のケースの場合、普通借地権と定期借地権のいずれを選択するかは、地主との交渉によることになります。
<3.普通借地権の期間>
(質問)
結局、普通借地権ということで地主と話が付きそうですが、借地契約の期間は法律で決まっていますか。
(回答)
借地借家法では、最低限度を保証しています。つまり、借地権の存続期間は30年と定められております。当事者同士でそれ以上の期間を約束することはいっこうに構いませんが、30年より短い期間を定めてもその約束は法律上効力がありません。
そして、この場合は、期間が経過しても、地主側がその土地を必要としている事情があるなど「正当事由」がない限り、当然に更新されます。
平成4年8月1日より前の法律(旧借地法)では、建物の種類によって、期間が違っていました。コンクリート造など「堅固」建物は30年以上60年以下、木造など「非堅固」建物は20年以上30年以下です。ですから、平成4年8月1日より以前に締結された借地契約の期間については、30年または20年の最低期間が保証されています。それ以下の約束は効力がないということになります。
<4.定期借地権の内容>
(質問)
結局、定期借地権ということで地主と話がつきそうですが、もう少し具体的にその内容を教えて下さい。
(回答)
定期借地権の場合、当事者間で50年以上の契約期間を合意したときに、その契約期間が満了すれば、当然に借地権は消滅します。普通借地権のときのような更新の制度はありませんので、地主側の事情など正当な事由があるかどうかを検討することなく当然に契約は終了します。借地契約が終了すれば、借地権者は、土地上の建物を撤収して土地を地主に明け渡さなければなりません。建物の撤収を避けようとすれば、借地契約終了時に建物を地主に譲渡することを予め約束しておくことができます(建物譲渡特約付借地権)。
定期借地権の場合は、法律上も、契約書を作成しなければならず、一般的には公正証書を作成することになっています。
<5.借地契約の更新>
(質問)
私は昭和46年から土地を借りてその上に家を所有していますが、今年で30年の契約期間が終了します。私としては、契約終了後もその建物に住み続けたいのですが、どうすればよいですか。
(回答)
あなたとしては「借地契約を更新します」と地主に対して請求すれば、契約は従来の契約と同一の条件で更新されます。口頭で請求するだけでも有効ですが、後になって言った言わないで争いになってもいけませんので、内容証明郵便を利用して請求すればよいでしょう。内容証明郵便の場合、相手方に出した文書と同じ内容のものが自分の手元に残るだけでなく郵便局にも保管されるからです。一方的に更新を請求された地主としては、契約更新につき異議を述べることも可能なのですが、更新を拒絶するには地主側でその土地を必要とするなどの正当事由がなければなりません。正当事由の判断は、地主の事情と借地権者の事情を総合的に見て判断されるものですから、地主にとっては条件が厳しくなっています。その結果、地主の異議について正当事由がないのであれば、借地権者の一方的な更新請求により契約は更新されます。地主が正当事由があると主張して、契約終了に基づいて土地の明渡しを求めて訴訟をしてきた場合、裁判所が正当事由の有無を判断することになります。
<6.法律による更新の制度>
(質問)
私の場合は、去年の時点で既に借地契約期間が過ぎているのですが、こちらとしても、借地上の家に住みつづけており、地主の側からも特に何も言ってきません。このような場合は、契約はどうなっているのでしょうか。少し間がたってから、契約が終了したから土地を明渡せと言われることはありませんか。
(回答)
この場合、借地権者の方から更新請求を行っていなくても、法律上当然に契約は更新されたものとみなされます。ですから、地主が、契約期間満了後、すみやかに更新について異議を述べていない限り借地契約は続いておりますので、後になって地主から契約終了を主張される理由はありません。
<7.正当事由とは>
(質問)
では、更新拒絶のための「正当事由」とは何を指すのですか。
(回答)
これは地主がその土地を必要とする事情だけでなく、借地権者がその土地を必要とする事情を考慮し、なおかつ、従来からのその土地に関する経過、利用状況、また立退き料をも考慮して地主側に借地契約の更新を拒絶するだけの正当な理由があるかどうかを判断するというものです。つまり、地主がその土地を使用する必要が発生したからと言って直ちに更新を拒絶する正当な理由があるともいえず、借地権者の利益も十分に考慮されるのです。例えば、地主がその土地に高層ビルを建てる計画があるために借地契約の更新を拒絶したという事案で、地主が生活に困っている事情が特にない反面、借地権者が長年借地上の建物に住んでいる高齢者で、他に所有する建物もないという場合に、地主に更新を拒絶するだけの正当な理由はないとした判例があります。他方で、借地権者が土地上の建物を実際はあまり使っていないというようなときは、地主にそれほど使用の必要性がなくても、たとえば、親族の住む家を建ててあげるというときでも、正当な理由ありと言えます。
<8.立ち退き料>
(質問)
地主が借地権者にいわゆる「立ち退き料」を払いさえすれば、立ち退かなければならないのではないですか。
(回答)
正当事由の判断にあたっては、地主が立退き料の提供を申し出ていることも考慮される材料にはなります。裁判においても、立退き料、金○○円の支払いと引き換えに明渡せと命じることがあります。しかし、立退き料はあくまで判断材料の一つに過ぎません。つまり、借地権者がその土地を生活の本拠としている反面、地主がその土地を特に必要とする事情がないにも関わらず、地主が「金さえ払えば」明け渡しを求めることができるということではありません。質問7の一つ目の例では、高層ビルを建築しようとする地主が立退き料の提供を申し出ていても、正当事由はないと判断されているのです。借地権者、地主ともにその土地を生活の本拠として必要としているなど、双方の必要性が同じ程度であると判断される場合に、立退き料の額によって調整する必要が出てくるということになるでしょう。
<9.借地契約更新後の期間>
(質問)
私は昭和50年4月1日から土地を借り、その上に木造の家を建てて住んでいます。借地契約の期間は地主との合意で30年間となっておりますので、昭和80年4月1日つまり平成17年(2005年)4月1日で一旦契約期間は満了します。
しかし、私はこの土地上に家族と共に住み続ける必要があり、地主も土地を自分で使うことは当分ない、と言っているので、おそらく借地契約は更新される見通しです。この場合、新たな契約期間はいつまでになるのでしょうか。
(回答)
借地借家法上は、借地契約が更新された場合、最初の更新のときは更新の日から20年、それ以後の更新のときは更新の日から10年が、それぞれ借地契約の期間となります。
但し、平成4年8月1日より前に締結された借地契約については、改正前の旧借地法が適用されますので、コンクリート造など「堅固」な建物については30年、木造など「非堅固」な建物については20年がそれぞれ更新後の契約期間となります。
したがって、平成17年4月1日に借地契約が更新された場合は、新たな契約期間は、それから20年間、つまり平成37年(2025年)までとなります。
<10.建物を建て直した場合の借地契約期間>
(質問)
(質問9の例で)実は、建物がかなり老朽化しているので、今の家を取り壊して、家を新築することも考えています。新築するとなると、借地契約が終了するようなことがあっては特に困りますが、契約期間の方はどうなりますか。
(回答)
地震、火災、水害その他の事故によって建物が倒壊したり、建物として利用出来なくなったりした場合、その他、建物所有者が自発的にその建物を取り壊したような場合のことを、借地借家法ないし旧借地法では「滅失(めっしつ)」と呼んでいます。
建物が「滅失」した場合で、借地契約の期間がまだ残っているときに、借地権者がその残っている期間を超えて存続する建物を新築したとします。現在の建築技術では、新築建物が長期間存続する場合がほとんどでしょう。
このとき、地主の承諾があるときに限り、契約期間は、地主の承諾があった日または建物が新築された日のいずれか早い日から20年間が当然に保証されます。借地権者と地主との間で、これより長い期間を定めることはできます。
借地権者が新築すると地主に事前に通知したにもかかわらず、2か月以内に地主が異議を述べなかったときも地主が承諾したものとみなされます。
ただ、この説明は平成4年8月1日以後の借地契約に適用される借地借家法の場合です。
それより前の契約については、旧借地法が適用され、上記の説明と若干異なっています。
つまり、借地契約の期間がまだ残っているときに、借地権者が残っている期間を超えて存続する建物を新築したときに、「地主が異議を述べなかったとき」は、「建物滅失の日」からコンクリート造など「堅固」建物については30年間、「非堅固」建物については20年間当然に保証されます。
したがって、ご質問の場合は、建物取り壊しの日が平成13年4月1日であるとすれば、地主が異議を述べなかった場合は、平成33年4月1日までは当然に契約期間が保証されます。
当然に保証されるというのは、平たく言えば当然に延長するということです。つまり、建物を新築するに際して契約を延長させてよいかどうか、質問7などで説明した「正当事由」があるかないかを検討する必要がないということです。
<11.建物を建て直したことについて、地主が異議を述べた場合>
(質問)
(質問10の例で)そうすると、建物の新築について地主が異議を述べた場合は、どうなるのですか。
(回答)
このとき、契約期間は延長せず、平成17年4月1日で契約期間は一旦満了します。
しかし、それで当然に契約が終了してしまうとは限りません。このときもまた、地主が契約更新を拒絶するだけの「正当事由」がなければ、当然に契約は法定更新されます。
ただ、正当事由が認められれば、契約は終了してしまいます。
<12.正当事由が認められる場合-建物買取請求権>
(質問)
これまでの回答によると、契約期間が満了したときに、地主が契約更新につき拒絶するに足りる「正当事由」が認められる場合には、契約は更新されず、借地契約は終了するということは分かりました。契約が終了した場合は、建物を取り壊して、地主に土地を明け渡さなければならないのですか。
(回答)
このような場合、建物がまだ十分に利用できるものであるときにも、取り壊さなければならないとすると、建物を建てるのにお金をかけた借地権者にとっては大きな損失ですし、社会的に見ても損失であると言えます。
そこで、借地権者には、地主に対して、建物を時価で買い取れと請求することができる権利が認められています。これを建物買取請求権と言いますが、借地権者が地主に建物を買い取るよう一方的に意思表示するだけで、地主の承諾がなくても、売買契約が成立し、地主には建物の時価相当額の代金を支払う義務が生じます。
<13.地代の値上げを請求されましたが、どうすればいいですか。>
(質問)
地主から地代の値上げを要求されました。長期間地代が10万円で据え置かれていたので、15万円まで増額されることはやむを得ないと考えていますが、地主は20万円に値上げすると言っており、納得がいきません。どうすればいいですか。
(回答)借地契約の当事者はお互い相手方に地代の増額または減額を請求する権利を持っています。
つまり、土地に対する租税が増えた若しくは減った、あるいは、土地の価格が上昇した若しくは低下したことが原因で、地代が近隣の類似する土地の地代と比較して相当でなくなった場合は、契約で定めた地代の条件に関わらないで、当事者は地代の増額または減額を請求することができます。
しかし、地代の増額または減額について、当事者間で決まらない場合が当然にあります。
このとき、双方いずれからでも簡易裁判所に調停を申し立てることができます。土地の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てることができます。調停では、3人の調停委員(1人は裁判官)を介して、増減額について話し合いがなされます。調停委員は双方の主張を聞き取って、妥当な金額に決着するように努力し、調停案を示すこともあります。双方が合意できれば、調停成立となりますが、合意が成り立たなければ通常は訴訟に移行することになります。
増額を請求された方からすれば、相手方が調停を申立してくるのを待っていてもいいし、そのような増額が認められないことの確認を求めて調停を申し立てることもできます。
<14.地代の増額が決まらない間、いくらの地代を払えばいいのですか。>
(質問)
(13に続いて)では、地代の増額が決まらない間、まったく地代を払わないわけにもいきませんが、いくら払えばいいのでしょうか。地主の要求している額を暫定的にでも払っておかないと、地代不払いで解除されることはありませんか。
(回答)
このときは、増額請求を受けている側が、調停または裁判で増額が決まるまでの間、自分で「相当である」と考える金額の地代を払っておけばそれで足ります。あなたは15万円までの増額は仕方がないと考えているのですから、15万円を払い続ければよいということです。
仮に増額自体理由がないと考えているならば、従来通りの地代を払っておけばよいのです。しかし、従来どおりの金額を下回る額では地代不払いということになります。
なお、地主が、要求する増額に足りなければ受け取らないと言って地代受取りを拒否した場合は、借地権者は法務局で供託しておかなければなりません。
但し、調停または裁判で増額が決まった場合に、それまで借地権者が支払っていた額だと不足がある場合は、不足額に年1割の支払期後の利息を付けて支払わなければなりません。その点は注意しておく必要があります。
<15.建物の種類、構造、規模又は用途を制限する条件を変更する方法はありますか。>
(質問)
借地契約上「木造・平屋建て、居住用建物の所有を目的とする」という条件があるのですが、5階建てのコンクリート造りの建物を新築しようと考えています。しかし、契約上はそのような建物を建てることはできず、地主もその条件を変更することについて同意してくれません。何かいい方法はないでしょうか。
(回答)
建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合であっても、「法令による土地利用の規制の変更」、「付近の土地の利用状況の変化」その他の事情が変更しており、現時点では借地条件とは異なる建物を所有することが適当になっているにも関わらず、その借地条件の変更について当事者間で協議が整わない場合は、当事者は地方裁判所に借地条件の変更を申し立てることができます。
裁判所は「借地条件の残存期間」、「土地の状況」、「借地に関する従前の経過」その他一切の事情を考慮して、借地条件を変更することができます。この際、裁判所は、借地条件を変更する代わりに、地代を増額したり、借地期間を延長したり、承諾料の支払いを命じたりすることもできます。
<16.増改築を制限する特約をしているにもかかわらず、増改築を実行する方法はありますか。>
(質問)
借地契約上、借地権者は「借地上建物を増改築することはできない」という約束をしているのですが、建物が古くなっているので、どうしても建物を改築しなければなりません。しかし、地主は増改築禁止の約束があるからと言って改築に反対しています。どうすればよいですか。
(回答)
増改築禁止特約がある以上、増改築をするには地主の承諾が必要です。しかし、地主の承諾が得られない場合であっても、土地を利用する上では増改築をするのが適当だという場合もありうるでしょう。このとき、借地権者は、地主の「承諾に代わる許可」を求めて裁判所に申立をすることができます。
このときに、裁判所が借地に関する一切の事情を考慮して許可をするか否かを判断すること、許可をする代わりに、地代の増額等他の条件を変更することができることは、15の場合と同様です。
<17.借地権を譲渡するにはどうしたらよいか。>
(質問)
借地上の建物を第三者に譲渡しようとしていますが、地主が反対しています。どうすればよいですか。
(回答)
借地上の建物を第三者に譲渡するときは、これに伴って、借地権を譲渡するか(借地権者の地位から完全に離れる場合)、借地を転貸する(借地権者の地位に残ったままの場合)ということになります。
借地権の譲渡あるいは転貸をするには原則として地主の承諾が必要です。地主の承諾なしに借地権の譲渡あるいは転貸をすると、地主から借地契約を解除される可能性もあります。
現在の裁判例では、仮に借地権の無断譲渡あるいは転貸をしても、「賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない」事情があると裁判所で判断されれば、解除は無効である、とされていますから、地主から反対されていても、無断譲渡あるいは転貸を実行し、地主から契約解除の意思を表示してきた場合に、その効力を裁判所で争うことは可能です。
ただ、借地権者の方からアクションを起こすこともできます。借地の所在地を管轄する地方裁判所に、申し立てて、地主の承諾に代わる許可を受けるのです。
裁判所はその申立について、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮して許可するか否かを判断します。
裁判所は許可をするに際して、地代の増額や名義書換料ないし転貸承諾料の支払いを命じることもあります。
他方で、地主としては、借地権者が裁判所に賃借権の譲渡又は転貸の許可を申し立てたときには、地主自らが借地上の建物、賃借権を譲り受け、または、転貸を受けると裁判所に申し立てることもでき、裁判所の判断で地主に対してそのように命ずることもできます。
<18.定期借地権を取得する場合に注意すべき点は何ですか。>
(質問)
定期借地権付で住宅を購入することになりましたが、借地権者として、どのような点に注意しておけばよいですか。
(回答)
借地契約の期間を50年以上とする場合には、その借地権を定期借地権とすることができます。
つまり、地主と借地権者との合意によって、50年以上で定めた期間が満了すれば、当然に借地契約が終了すると予め約束することができます。
地主と借地権者は、借地借家法上の、契約の更新に関する規定、建物再築による存続期間の延長に関する規定、建物買取請求権に関する規定が適用されないことを特約しておかなければなりません。
ですので、期間が満了すれば、当事者が全くの自由意思でさらに合意更新する場合を除けば、当然に借地契約が終了し、借地権者は借地上の建物を撤去し、更地にして地主に明け渡さなければなりません。
普通借地権の場合は、借地権者が地主に契約の更新を請求したり、期間満了後も引き続き借地を使用している場合には、原則として借地契約は更新されます。地主側が更新を拒絶するには、更新を拒絶するための「正当な事由」がなければなりません。それだけ、借地権者が強い権利を有していたのですが、定期借地権者には、そこまで強い権利は認められません。
また、普通借地権の場合には、借地契約終了時に、借地権者が地主に対して、借地上の建物を買い取るよう請求することも認められるのですが、定期借地権の場合は、それは認められません。
もっとも、定期借地契約をするかどうかは当事者間で自由に決めることが出来ます。
定期借地権の約束をする場合は、書面でしなければなりませんが、通常は公証役場において公正証書でする場合が多いでしょう。
<19.建物譲渡特約付借地権とは何ですか。>
(質問)
建物譲渡特約付借地権とは何ですか。
(回答)
借地契約をする際に、前もって、契約後30年以上を経過した日に借地上の建物を地主に「相当の対価」で譲渡することを当事者間で約束しておくことができます。
約束した日が将来到来すれば、借地上の建物の所有権は当然に地主に移ります。
この借地契約が普通借地契約であっても定期借地契約であっても構いません。
相当な対価というのは時価と同じ意味です。
約束した日が将来到来したときに、借地権者または借地上建物の賃借人が住み続けていれば、地主が所有する建物を占有していることになりますが、これは不法占有とはならずに、期間の定めのない賃貸借が設定されたものとみなされます。
<20.事業用借地権とは何ですか。>
(質問)
会社の事業で新店舗を設けるため、ある土地を借りようと考えています。地主は「事業用借地権」だったら貸す、と言っています。事業用借地権とは何ですか。
(回答)
事業用借地権も定期借地権の一種です。つまり、契約期間が満了すれば、当然に契約は終了し、借地借家法上の自動更新の規定は適用されず、借地権者はその土地を更地にして地主に明け渡さなければなりません。
事業用借地権と言えるためには、借地契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とするものであることが必要です。居住用建物を建てるために土地を借りる場合は該当しないということです。
そして、借地契約の期間は10年以上20年以下でなければなりません。
この契約は公正証書によってしなければなりません。
<21.一時使用目的の借地権とは何ですか。>
(質問)
知人が市議会議員選挙に立候補することになり、私の土地を選挙事務所用のプレハブを建てるために利用させて欲しいと申し入れてきました。このような場合も、借地借家法上の規定が適用され、借地権者が強く保護されるのでしょうか。
(回答)
土地の使用目的、契約成立の経緯、現実の土地利用状況、期間等から判断して、その借地契約が「一時使用目的」であると認められる場合には、借地借家法上の、自動更新に関する規定、建物買取請求に関する規定などが適用されません。一時使用目的であるかどうかは、契約上の文言のみによって決まるわけではありませんが、仮に契約書を交わすとすれば、一時的な使用を目的とする借地契約であることを明記しておけばよいでしょう。