倒産会社に対する取引の継続
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【再建型倒産処理】
会社が「事実上倒産した」場合でも、民事再生法、商法上の会社整理、会社更正などの法的整理の申立てがなされた場合は、その会社の営業自体は継続されます。
最近では、民事再生法の申立てをした「そごう」がその例です。
これらの法的手続は、会社の継続、経営の再建をめざす「再建型倒産処理」または「再建型法的整理」と呼ばれるものです。
これに対し、「破産」の場合は営業を継続することはありません。完全に廃業して、すべてを清算する「清算型法的整理」です。
ところで、「再建型」の場合、その会社は営業を継続するために、当然、販売のための商品、生産のための原材料を引き続き他社から仕入れなければなりません。
そこで、従来の納品業者に対して、引き続き商品や原材料の供給してくれるように要請してくるのが普通です。
この要請に対し、納入業者としてどのような態度をとるべきか。これが問題です。

【どう考えるべきか】
納入業者としては、支払いがストップしている代金を先に支払ってもらわないとそんな協力はできない、という気持ちはもちろんあるでしょう。
しかし、それは無理というものです。それができないからこそ法的整理に入ったのですから。
また、今までの代金も払えないのだから今後納入する分も焦げ付くに違いない。損の上塗りはごめんだ、こう考えるのも自然かもしれません。
しかし、ここでは法律知識に基づいて、得をする方へ発想を切り替えるべきです。
つまり、旧債権の焦げ付きはいったん忘れて(半ばあきらめて)、整理、再建中の会社に積極的に商品を納入する、そして、それによって、売上、利益を上げ、少しでも焦げ付きの損をカバーしよう、と考えることです。
焦げ付き債権は、種々の法的手続を経て、一部カット、残額分割支払いとなる運命ですから、それ以上手の施しようがないのです。

【取引条件】
取引を再開しようとする際は、まず支払条件の交渉をします。
現金取引になる可能性も十分あります。聞くところ、「そごう」の場合も基本的にそうしているようです。
相手の会社は、旧債務の支払いをストップしているのですから、売掛金の回収分など資金は余ってくるはずなのです。
現金取引ほど安全なものはありません。締め日から支払日まで少しの滞留期間があっても、大した問題ではありません。
現金仕入れするほど資金の余裕はないが、受取手形があるので、それをいわゆる回り手形として決済したい、というかもしれません。
回り手形はその振出人の信用度にもよりますが、もしそれが不渡りになっても、もとの売掛金の取立てはできる、という約定にしておけば、回り手形による取引も大いに歓迎です。

【信用供与の危険性】
信用取引、つまり手形支払いなどの条件ならどうか。また、同じ意味をもつ貸金(融資)の場合はどうか。
これもあまりおそれずに応じていく方が得と思われます。
なぜなら、それらの債権、つまり法的整理申立ての時点よりあとで発生した債権は、法律上、棚上げになっている旧債権より優先して返済されます。したがって、それが回収不能となる危険性はほとんどないのです。
以下、最近流行の「民事再生法」を例に説明します。
「再生手続の申立て」があり、それが相当と認定されると、裁判所は「再生手続開始」の決定をします。
再生手続開始の後に納入した商品代金債権、貸付債権などは、「共益債権」と言って、無条件で、「再生債権」(棚上げ債権)に先だって、約定にしたがい、随時支払われます。
しかし、再生手続の申立てから再生手続開始までの間になされた商品売買や貸付の場合は少しだけ違います。
これらが「共益債権」になるためには、事前に、裁判所の許可またはそれに代わる監督委員の承認が必要です。
したがって、その期間中に取引をする場合は、相手に対して、「裁判所の許可か監督委員の承認を得ていますか。その書類を見せて下さい。」と言って、それを確認してから取引するようにして下さい。

【交渉の相手方】
会社更正手続においては、もとの経営者(代表取締役)は経営権を失います。したがって、取引の交渉や条件決めは保全管理人または管財人としなければなりません。
しかし、民事再生法では、もとの経営者の経営権はそのまま維持されます。
したがって、交渉や契約はもとの代表者や責任者と行えばよいことになります。
ただ、裁判所や監督委員の監督に服しているので、もとの代表者がすべてを独断で行えるわけではないことを念頭においておくべきです。
細かい法律の規定があり、法的手続中の会社との取引は100パーセント安全というわけではありませんが、基本的には、その会社との取引は積極的な姿勢でのぞんだ方が得策なようです。もし有利な条件で取引を拡大できれば、その分棚上げになっている旧債権の焦げ付き損を取り戻せることになります。