平成16年5月に破産法が改正され、平成17年1月1日から施行されました。今回は、新破産法のうち、これまで問題の多かった敷金の返還について説明します。
会社がオフィスや倉庫を賃借する場合、通常敷金を預託させられます。この敷金は賃料や原状回復費用の担保の役割を果たしており、賃借したオフィスや倉庫を返還した後、未払賃料や原状回復費用を除いて借主に返還されます。
しかし、オフィスビルや倉庫を賃貸している会社が倒産した場合、敷金が返還されるかどうか不透明になり、敷金の大部分が返還されないという事件も起こっています。他方、その場合でも賃借人が賃借物を使用する限り賃料の支払い義務はなくなりません。そのため、賃貸人が倒産した場合、賃借人としては、敷金が返還されないかもしれないのに、賃料を契約通りに支払わされるという割り切れない結果となっていました。
そこで、従来賃借人としては、敷金額まで賃料を滞納し、賃借物の返還後に相殺するという手段で対抗してきましたが、賃料滞納の場合には賃料額の2倍を支払わなければならないという条項があったり、ビルや倉庫に抵当権を設定している銀行が賃料を差し押さえた場合に対抗できないなど、常に有効な対抗手段というものはありませんでした。
新破産法では、賃貸人が破産した後に賃借人が賃料を支払う場合、将来の相殺のために、返還されるべき敷金額まで寄託を請求することができることが明記されており、一旦は賃料を支払うものの、破産手続きが終わるまでの一定時期までに賃借物を返還すれば、敷金が返ってくることになっています。
なお、倒産したときの法律には、破産法の他に民事再生法や会社更生法がありますが、新破産法の施行に伴って改正され、賃料の6ヶ月を限度として相殺できることになっています。つまり、敷金が6ヶ月分をこえている場合、6ヶ月間は賃料を支払わなくて済み、その限度で敷金が返還されたのと同様の効果がありますが、預けた敷金から6ヶ月分を差し引いた残りは一部しか返還されない可能性が高いということになります。
倒産と賃借人の敷金との関係
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