倒産と担保提供者の関係 ~最高裁判決から~
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【主債務者と物上保証人】
金融機関から事業資金等を借り入れるときに、借金する人もしくは借金する会社の経営者が所有している不動産を担保として提供することを求められることがよくありますが、これとともに連帯保証人をつけることを求められたり、第三者の所有する不動産を担保として提供することを求められたりすることもよくあります。
この場合に借金する人や会社を主債務者というのに対して、主債務者のために所有する不動産等を担保として提供した人や会社を物上(ぶつじょう)保証人といいます。
連帯保証人になりながら同時に物上保証人になる場合もあれば、物上保証人だけになる場合もあります。

【物上保証人の求償権】
このように物上保証人になった場合に、借金をした人(主債務者)が順調に借金を返してくれればいいですが、途中で支払いをしなくなってしまう場合があります。
この場合、物上保証人は担保として提供した不動産等をお金に換えて債権者に支払わなければならないのですが、支払った後、支払った分を主債務者から返してもらえることになっています。これを求償権(きゅうしょうけん)といいます。

【主債務者の破産等による物上保証人の求償権の行方】
しかし、主債務者が破産したり、民事再生を申し立てたりすると、問題は複雑になります。
主債務者が破産したり、民事再生を申し立てたりすると、債権者は裁判所に債権の届出をします。そして、破産配当表や民事再生計画によって決まった配当率に従って配当を受けることになります。
問題は、債権者に返済した連帯保証人、物上保証人もこの配当を受けられるかということです。
この問題にあてはまるケースとして、(1)連帯保証人、(2)連帯保証人であり物上保証人、(3)物上保証人、が債権者に返済した場合に分けられます。
(1)と(2)は従来から債権者に全額の支払いをした後でなければ、破産管財人等から配当をうけることはできないことになっていました。
問題があったのは(3)の物上保証人が(連帯保証人ではない)担保に入っている不動産を処分して債権者に返済した場合にも、その債権者(担保にとっている債権者)が有する債権全額の支払いをした後でなければ配当をうけることはできないかどうかです。
これについては、平成14年9月24日に最高裁判所で判決が出されて、その債権者が有する債権全額が弁済されなければ破産管財人等から配当を受けられないということになりました。
具体的にどうなるか、主債務者には1億円の債務があり、物上保証人が5000万円の不動産を担保に提供している場合を例にとって説明します。
1、配当率が10%であれば、債権者は6000万円(担保の5000万円と1億円の10%)を返済してもらえますが、物上保証人は配当を受けられません。
2、配当率が50%であれば、債権者は1億円(担保の5000万円と1億円の50%)を返済してもらえますが、物上保証人は配当を受けられません。
3、配当率が80%であれば、債権者は1億円(担保の5000万円と1億円の80%のうち5000万円)を返済してもらえ、物上保証人は3000万円の配当を受けられます。
この場合には、債権者は全額の支払いを受けても、まだ配当額(1億円の80%である8000万円から5000万円を差し引いた額である3000万円)が残るからです。

少し前に出された最高裁の判決ですが、最近、公刊されはじめたこと、実務に与える影響が大きいと思いますので紹介します。