<ポイント>
◆会社法の改正点の一つに「社外取締役の選任義務化」がある
◆実際上は上場会社への義務づけであり、非上場会社への影響はほぼない
1月16日に法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会において、会社法改正に向けた要綱案が決定されました。正確には「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」という表題がつけられています。
株主総会資料の電子提供制度の導入、株主提案の議案数制限、役員報酬に関する情報開示の拡充など幅広い論点を含む改正が予定されていますが、そのなかの論点の一つに「社外取締役を置くことの義務付け」があります。
社外取締役選任の義務化については、一部の新聞で「非上場の大会社」にも義務が課されるという報道がされています。
しかし、こうした報道はミスリーディングであり、実際には非上場の会社には影響がないといってよい改正内容です。
要綱案の提案は、以下の要件「全て」にあてはまる会社について社外取締役選任を義務化しようというものです。これら全ての要件にあてはまる非上場会社は観念的にはあり得るものの、実際には極めてレアケースです。ほとんど存在しないでしょう。
(社外取締役選任が義務化される会社)
① 監査役会設置会社で、
② 公開会社であり、かつ大会社であって、
③ 金商法により有価証券報告書を提出しなければいけない会社
改正の実際上の狙いは上場会社について社外取締役選任を義務付けることにありますが、端的に「上場会社」という要件にしなかったため、一部報道におけるミスリーディングな伝え方につながったものと思われます。
なお、上記でみた社外取締役選任が義務付けられる会社の範囲は、現在の会社法(平成26年改正法)において、社外取締役を選任していない場合に「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明が必要になる会社の範囲と同じです。
立法経緯を考慮して、両者の範囲を揃えて立法措置に連続性をもたせたのが今回の要綱案の提案内容とみることができます。
以上のとおりですので、上場していない会社には影響のない改正です。