令和5年景表法改正について(その2)

<ポイント>
◆違反行為に対する抑止力を強化するため課徴金制度が見直される
◆優良誤認表示、有利誤認表示に対する直罰規定が新設された
◆適格消費者団体による開示要請規定が導入される

 

前稿に記載したとおり、令和5年に景表法が改正され、令和6年中には施行されます。そして、本改正は以下の3つの観点から整理することができます。
第1 事業者の自主的な取組の促進
第2 違反行為に対する抑止力の強化
第3 円滑な法執行の実現に向けた各規程の整備等

この第1の観点の一つとして、確約手続が導入されます(前稿第1-1参照)。以下、引き続き、これらの観点から法改正を整理します。

第1 事業者の自主的な取組の促進
2 課徴金制度における返金措置の弾力化
課徴金制度における返金措置とは、課徴金納付命令の対象となった商品または役務について取引をした消費者から申し出があった場合に、その消費者に対し、商品または役務の購入額の3%以上の金銭を返金する措置のことをいいます(第10条(本改正後の条項。以下同様。))。事業者が返金を行った場合、課徴金額から返金額が減額されます。
この返金方法について、これまでは金銭による返金のみが可能でした。本改正により、第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)による返金も許容されることになりました。

第2 違反行為に対する抑止力の強化
1 課徴金制度の見直し 
  (1)課徴金の計算の基礎となる売上額を推計する規定の新設
課徴金の金額は、課徴金の対象となる商品または役務の売上額を基準に算出されます。そのため、事業者から売上額が報告されない場合には、課徴金の計算に支障が出るという問題がありました。
そこで、本改正により、事業者が課徴金の計算の基礎となる売上額等の報告を求められたにも関わらず報告をしない場合には、売上額を推計することができる規定が新設されました(第8条第4項)。
  (2)課徴金額の加算
過去に課徴金納付命令を受けたにもかかわらず、繰り返し違反行為を行う事業者がいることが問題視されていました。このような繰り返しの違反行為に対する抑止力を強化するため、一定の要件のもと課徴金額を加算する規定が新設されました。
具体的には、違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対し、課徴金の額を1,5倍に加算する規定が新設されました(第8条第5項、第6項)。
2 罰則規定の拡充
  優良誤認表示、有利誤認表示に対して直罰規定(違法行為があった場合に行政指導等により自主的な改善を促すといった過程を経ることなく、即時に罰則を適用することを定めた規定)が新設されました(第48条)。本改正後、優良誤認表示、有利誤認表示をした場合、100万円以下の罰金の対象となります。

第3 円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等
1 国際化の進展への対応
比較的実務への影響が小さいと思われることから簡潔に記載しますが、措置命令等における送達制度の整備・拡充がなされ、外国執行当局に対する情報提供制度が新設されました(第41条~第44条)。
2 適格消費者団体による開示要請規定の導入
適格消費者団体とは、不特定多数の消費者の利益のため、消費者契約法12条所定の差止請求権を行使するために必要な適格性を有する消費者団体として内閣総理大臣の認定を受けた法人のことをいいます。
この差止請求の実効性を確保するため本改正により、適格消費者団体は、一定の場合に、事業者に対し、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるようになりました。事業者は、要請に応ずる努力義務を負います(第35条)。