<ポイント>
◆経済産業大臣及び法務大臣の確認等の一定の要件を満たす上場会社はバーチャルオンリー型株主総会の開催が可能に
◆2年間の特例期間経過後のバーチャルオンリー型株主総会開催にはリアル総会での定款変更が必要に
株主総会を開催するにあたり、改正会社法では資料の電子的提供が可能になりましたが、株主が質問し説明を聴く機会を確保するための物理的に参集できる「場所」を定める必要があることは従前のままです。
ただし、実際に開催されている株主総会(リアル株主総会)にオンラインで参加するいわゆるハイブリッド型の株主総会は適法とされており、実際にも行われています。
ハイブリット型の株主総会には、会社法上の「出席」と扱われるいわゆる「出席型」と「出席」と扱われないいわゆる「参加型」があります。
参加型では一般的に議決権の行使、質問等を認めませんが(会社が任意に株主のコメントにリアルタイムで対応することは可能)、出席型でも、招集通知で事前に周知すること等を条件に、たとえば代理人による出席や動議の提出及び採決への参加についてはリアル出席の株主に限定する等のバーチャル出席株主の権利行使が制限されることもありえます。
物理的な場所を定めずオンラインのみで開催するバーチャルオンリー型株主総会は、上記ハイブリッド型の遠隔地の株主を含む多くの株主が出席できるという利点を一層多く享受し、運営コストの削減、感染症リスクの低減という新たな利点に加えて上記ハイブリット型総会の課題も解決できるものといえます。
上記のとおり会社法では株主総会において「場所」の定めは必要ですが、例外的に2021年6月16日に公布された産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律(以下「改正産競法」といいます)により経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた等の一定の要件を満たす上場会社は、株主総会において「場所」の定めは不要になりました(本稿では普通株主総会を念頭におきます)。
改正産競法により上記経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けるためには、経済産業省令及び法務省令で定める要件を満たす必要があります。
その中には「通信の方法に係る障害に関する対策」及び「通信の方法としてインターネットを使用することに支障のある株主の利益の確保に配慮すること」についての方針を定めていることがあります。
前者については代替的な通信手段を用意しておくこと等が考えられます。後者については、通信が可能になるものを含む器機の貸出しや電話による出席等が考えられます。その場合、対応する株主数を限定することは可能であると考えられているようです。
その他、責任者を置いていること、株主数が100人以上であることがあります。
また、場所の定めのない株主総会とすることができる旨の定款の定めがあることが必要です。
この定款の定めは上記の経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けることが前提となっています。
経過措置によって、2021年6月16日以後2年間は、上記確認を受けた上場会社については、上記定款の定めがあるものとみなすことができることになっています。
ただし、上記のとおり定款の定めがあるとみなして開催されたバーチャルオンリー株主総会においては場所の定めのない株主総会の定款変更の決議をすることは認められていません。
したがって、上記2年間の経過措置以後のバーチャルオンリー型株主総会を開催するためにはリアルまたはハイブリッド型の株主総会を開催して定款変更の決議をする必要があります。
バーチャルオンリー型株主総会の招集の決定にあたっては、通信の方法、書面による議決権行使を認めること及び書面等による事前の議決権行使をした場合に当該株主が通信の方法を使用したときにおける当該議決権行使の効力の取扱いの内容を定める必要があります。事前の議決権行使をした株主がバーチャルオンリー型株主総会で議決権行使をした時点で事前の議決権行使の効力を失わせること等が考えられます。
バーチャルオンリー型株主総会ではリアル株主総会と同じく、議長の議事整理権の下で総会に参加している株主からの質問や動議を受け付ける必要があります。
その方法としては、音声により発言を受け付ける方法、株主に質問事項等をテキストに入力して送信してもらうこと等が考えられるところです。
ただ、前者についてどのようにして株主の発言の意思を明らかにし、議長が指名するのか、後者についてはどのようにして恣意的にならないように質問を選定するのか、等の問題が考えられます。今後の各社の工夫をまつことになると思われます。