<ポイント>
◆社債管理補助者制度が導入されて、より充実した社債の管理が期待される
◆社債権者集会による元利金の減免が可能に
◆社債権者全員の同意により社債権者集会の省略が可能に
会社は、社債を発行する場合には、原則として社債管理者を定める必要がありました。
例外的に、各社債の金額が1億円以上である場合またはある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額を除して得た数が50を下回る場合には社債管理者を定めないことが可能でした。
実際には、社債管理者を設置することに伴うコストが高くなることもあって、上記の例外規定に該当するよう社債の設計することが多かったといわれています。
このように社債管理者を定めていない場合であっても、通常、財務代理人が定められて社債の管理が行われていた(そのため財務代理人の英語名からFA債と呼ばれていた)といわれています。
財務代理人は社債発行会社との契約によって同社の代理人となるものであって、社債権者の権利を行使してくれるわけではないので、FA債の債務不履行が生じ、たとえば破産手続きが開始すると、社債権者が自ら債権届出等をしなければならないことになります。
このような事態を避けるため、社債管理者を定めることを要しない場合であっても、第三者が、社債権者のために、社債権者による社債の管理を補助する一定の事務を行うことを可能にすべきである旨が指摘されていました。
改正会社法では、社債管理者を定めることを要しない場合、社債管理補助者を置くことができるとされました。社債管理者を定めた場合であってもその設置が必要的ではない場合には、社債管理補助者を置くことができます。
なお、担保付き社債の場合には、担保付社債信託法により信託会社が社債権者のために社債を管理することになっているので、社債管理補助者を設置できません。
社債管理補助者は、社債権者が自らの社債の管理を行うことが前提となっています。
そのため、社債管理補助者の権限は社債管理者の権限より限定されています。
社債管理補助者の権限には、破産手続き参加などの法定の権限と社債に係る債権の弁済をうけることなどの社債権者と社債管理補助者との間の委託契約による権限があります。
ただし、上記の契約による権限の中には社債権者集会の決議が必要なものもあります。
社債管理者を定めることを要しない場合、社債管理者を定めるか否か、社債管理補助者を定めるか否かは任意ですので、その選択結果を明らかにするために、社債管理補助者を定めることとするときは、社債管理者を定めないこととする旨及び社債管理補助者を定めることとする旨をいずれも募集事項として定めて、募集社債の引受の申込みをしようとする者に対して通知しなければならないことにしました。
また、委託契約によって定めた社債管理補助者の権限なども募集条項として定めなければならないことになりました。
社債管理補助者が2以上あるときは、社債管理補助者は、各自、その権限に属する行為をしなければならないとされています。社債管理者が2以上あるときは、共同してその権限に属する行為をしなければならないとされているのと異なります。
社債管理補助者は、その裁量は限定されていることから、共同する実益が乏しく、迅速、円滑な事務遂行が妨げられないようにするためと説明されています。
その他、社債管理補助者の資格、義務及び責任、辞任、解任及び事務の承継についても定められていますが割愛します。
社債発行会社が約定どおりの弁済が困難になり、社債の元利金の支払債務の減免を認める実務上の必要性が生じた場合の会社法の規定は必ずしも明確とはいい難いものでした。
改正法ではこの点を明確にして、社債権者集会の決議によりできる行為として、当該社債の全部についてする債務の免除が明定されました。
なお、当該決議が効力を有するには裁判所の認可が必要であり、裁判所は、決議が著しく不公正であるとき等には認可することはできないとされています。
改正前は社債権者全員の同意があるときも社債権者集会の決議が必要であると理解されていましたが、株主総会と同様に、社債権者集会の目的である事項について提案された場合において、当該提案につき議決権者の全員が書面等により同意の意思表示をしたときは、当該議案を可決する旨の社債権者集会の同意があったものとみなすこととし、かつ、社債権者集会の決議について裁判所の認可を受ける必要がないこととしました。