<ポイント>
◆商品形態も特別顕著性・周知性の2条件を満たせば商品形態も「商品等表示」に該当しうる
ユニットシェルフ(組み立て式の棚)を販売していた㈱無印良品計画が、これに類似する商品を販売しているとして、㈱カインズに対してその販売等の差し止め及び商品の廃棄を請求し、東京地方裁判所民事第46部の平成29年8月31日判決で、かかる請求を認容する判断がなされました。
本訴訟では不正競争防止法2条1項1号を根拠としていますが、ここで要件とされている「商品等表示」の意味が問題となります。同号では、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装」を列挙していますが、これら以外でも「その他の商品又は営業を表示するもの」が「商品等表示」に含まれます。
では、本件で争点となった棚の形状・構造・外観等のような商品形態がここに含まれるのか、またどのような場合に含まれるのかが争点となります。
ところで、一般的には棚のデザインを保護するために意匠法があり、意匠登録すれば登録から20年間保護されますが(意匠法21条)、あまり利用されていません。
また、商品形態の保護については不正競争防止法2条1項3号に規定があります。しかし、この規定により保護される期間は、模倣の対象となった商品が最初に販売された日から3年間に限られます(不正競争防止法19条1項5号イ)。
このように他の規定では保護に限界があることから、不正競争防止法2条1項1号がその保護の範囲外となっているケースの受け皿となっているのも実情です。
本判決は、以下のとおり判示して、商品の形態はそのままでは「商品等表示」に該当しないが特別顕著性と周知性を満たせば該当するとしています。
「商品において,形態は必ずしも商品の出所を表示する目的で選択されるものではない。もっとも,商品の形態が客観的に明らかに他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴を有し,かつ,その形態が特定の事業者により長期間独占的に使用されるなどした結果,需要者においてその形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば,商品の当該形態自体が『商品等表示』(不正競争防止法2条1項1号)になり得るといえる。」
こうした判断枠組み自体は、吸水パイプ事件(知財高裁平成29年2月23日判決。否定例)、エジソンのお箸事件(知財高裁平成28年7月27日判決。否定例)等でも示されています。本件の控訴審の判断も注目されるところですが、否定例に比べ肯定例は少ないように思われ今回ご紹介する次第です。
なお、店舗外観を商品等表示に該当すると判断したコメダ珈琲事件(東京地裁平成28年12月19日決定。肯定例)もあり参考になります。